FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

第七章「しあわせのいえ」―3―

「“彼”は、まだ来ていないのですか」
全員の顔を順番に見回して、やって来た男が言った。
後ろを向いて、少し開いた扉の隙間から外を確認する。
まだ“彼”が来る気配はない。
「あ~、あいつぅ?もうすぐ来るんじゃねえ?つうか、おせえし」
外したヘッドホンを首に掛けて、DJ風の若者が答えた。
ワックスで毛先を立ち上がらせた頭を、落ち着きなく弄くっている。
「そうですか。では、もう少し待ちましょう」
放置された工作機械の上に鞄を置いてから、袖をまくって腕時計を見る。
予定の集合時間には、まだ間があった。
ふと、振り返った男の目が妖しく光る。
相対した者の心に本能的な恐怖を呼び起こすような、不気味な輝きだった。
男の姿が揺らめき、一瞬だけ別の何かに変わった。
緑色の外皮に覆われた恐るべき怪物の姿だ。
――彼はワームだった。
リーダー格の統率からはぐれて孤立している仲間を探し出し、まとめる役目を負っている。
そのために、帰宅途中の男を殺して擬態し、数年前から社会に潜伏していた。
会社の人間も、男の家族も、誰もその事を知らない。
男が本物かどうかを疑うということさえ、彼らには考えつかなかった。
40歳を過ぎても平社員のままで、うだつの上がらなかったこの男は、水面下で暗躍する連絡員として、まさに適任だったのだ。
擬態して以降、男は何人もの人間と接触を試みた。
この場にいる全員が、そうして男によって集められた者ばかりだった。
彼らの目が男と同じように光る。
いつの間にか、工場の中に、点々と妖しい光が灯っていた。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

研究員D

Author:研究員D
「ギリギリ映らない画面端にいるエキストラ研究員」のイメージというのが名前の由来。
基本的に特撮ヲタ。
また、マイナーなものに惹かれる体質。
特撮全般および一部のアニメや漫画(マイナー作品とか古いの)を愛する。

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
現在時刻
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。