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第七章「しあわせのいえ」―2―

くたびれた背広を着て、鞄を持ったサラリーマン風の男が、息子と手を繋いで歩いている。
年は中年で、背格好は中肉中背。
眼鏡をかけた顔も、特にこれといって特徴がなく、ありふれているという評価が相応しい。
ある場所で立ち止まった男は、身を屈めて、息子と目線を合わせてから言った。
「ここで待っていなさい。すぐに戻ってくるから」
少年は素直に頷いて、遠ざかっていく父親の背が見えなくなるまで目で追い続けた。

靴の底が砂利道の上を踏む。
男が向かった先には、ところどころ塗装が剥げた、青い屋根の古い工場があった。
雑草が生い茂った更地の中央に、自分の縄張りであるかのように、我が物顔で鎮座している。
よほど昔のものらしく、外側は老朽化して痛みが激しい。
しかし、支える柱はしっかりしているので、倒壊する心配はなさそうだ。
既に使われなくなって久しいが、土地の所有権を巡るごたごたが起こり、裁判沙汰になった。
年月が経っても事態は収束せず、建物自体は未だに手つかずのまま残されていた。
鉄の扉が、重々しい音を立てて真ん中から開く。
やたら高い天井に吊り下げられた旧式のクレーンが、微かに揺れた。
横幅が大きく、奥行きのある外観から想像出来る通り、中はかなり広い。
男が足を踏み入れた時、室内には、ざっと見ただけで十人以上の人間が集まっていた。
学校指定のブレザーを着た大人しそうな女子高生が、入ってきた男に気付いて顔を上げた。
その手前では、ストリートファッションに身を包んだDJ風の若い男が、ヘッドホンから流れる音楽に合わせて激しく体を動かしている。
奥にはスーツ姿のOLや散歩中といった格好の老人、茶髪の大学生などが、転々と置かれたドラム缶の上に、それぞれ座っていた。
後ろの方にも、まだ何人かいる。
ここに揃っている者達は、その誰もが、年齢も性別も職業もバラバラだった。
だが、彼らには一つだけ共通する特徴があった。
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プロフィール

研究員D

Author:研究員D
「ギリギリ映らない画面端にいるエキストラ研究員」のイメージというのが名前の由来。
基本的に特撮ヲタ。
また、マイナーなものに惹かれる体質。
特撮全般および一部のアニメや漫画(マイナー作品とか古いの)を愛する。

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