FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

第七章「しあわせのいえ」―1―

次の日の午後、有沙は一人でマシンゼクトロンを走らせていた。
ワームが現れたのではない。
行き先は、都内の児童養護施設『しあわせのいえ』だ。
以前に、ここで暮らす子供達が、園長の引率で街へ遊びに行ったことがある。
その時の場所と時間が、ちょうどワームの出現と重なってしまった。
あわやという所で有沙が率いるシャドウ隊が駆けつけ、子供達を危機から救った。
それ以来、有沙は時間を作っては、定期的に施設を訪問している。
子供達や園長も、それを暖かく迎えた。
特に子供達は、年の離れた姉が出来たかのように喜んだ。
有沙が来ると、いつも彼女にくっついて回り、遊んでくれるよう、しきりにねだった。

目的地に到着し、マシンを駐車した有沙を見つけた10才くらいの女の子が、二階の窓から笑顔で手を振った。
有沙も、彼女を見上げて手を振り返した。
裏手の方は植林されて、ちょっとした林になっている。
夏にはカブトムシやクワガタムシが採れることもあって、子供達の遊び場の一つだ。
中に入っていくと、子供達が集まってきて、有沙の手や、スーツの裾を引っ張った。
「お姉ちゃん、今日はなにして遊んでくれるの?」
「ねえねえ、本読んでよ!」
「キャッチボールしよう!約束してたでしょ」
「お話して!」
騒がしいくらいにはしゃぐ子供達の声を聞きつけて、奥から初老の男性が現れた。
この施設の管理と運営をしている園長だ。
頭には白髪が混じり始めて、顔には皺が刻まれている。
施設で育つ子供達にも親しみやすい、柔和で優しそうな笑みを満面に湛えている。
有沙は、頭を下げて園長に挨拶した。
「こらこら。そんなに一遍に言っては、藤さんが困ってしまうでしょう。すみませんねえ」
「いえ。私も、子供達には色々と教えてもらっています。それに、この子達の事が好きですから」
「みんな、あなたが来てくれたのが嬉しいんですよ。さて、私は園長室にいますので、何かあったら遠慮なく呼んで下さい」
二人が話している間、子供達は、じゃんけんをしていた。
どうやら、何をしてもらうかを決めているらしい。
「やったー!」
最後まで残った小さな男の子が、手を挙げて喜んだ。
結局、今日は本を読んでもらうことに決まったようだ。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

研究員D

Author:研究員D
「ギリギリ映らない画面端にいるエキストラ研究員」のイメージというのが名前の由来。
基本的に特撮ヲタ。
また、マイナーなものに惹かれる体質。
特撮全般および一部のアニメや漫画(マイナー作品とか古いの)を愛する。

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
現在時刻
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。