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『ダーティー・フィンガーズを追い詰めろ――その5――』

『ザ・プレイグス』が指し示した先で、意気揚々と路地裏を進んでいた川内の身に異変が起きた。
川内自身が歩く事を止めた訳でもないのに、いきなり足が動かなくなったのだ。
それだけではなく、目線の高さも、やや低くなったような気がする。
「な、なんだ?なんで俺は進んでねえんだ?心も身体も明るい未来に向かって前進してる真っ最中だってのによぉ~」
不審に思った川内は、自分の足下に視線を落とした。
動けない理由は、すぐに分かった。
「うおあぁぁぁ――ッ!?なッ、なんだこりゃあッ!?俺のッ!俺の“足”がねえッ!?」
川内は、あらん限りの声で絶叫した。
どれだけ歩こうとしても前に進めないのが当たり前だ。
川内の両足が“なくなって”いる。
正しくは、“砂”に変わっていた。
これが『ザ・プレイグス』の“能力”だ。
殴ったものや触れたものを“砂”に変える“能力”――その洗礼を受けた川内は、李依の言葉通りに、一切の移動が許されなくなった。
石神李依は、川内が考えている程のお人好しではない。
“最後のチャンス”を与えるとは言ったが、それを提案した李依本人も、川内が改心する事を期待はしても信用はしていなかった。
だから、万が一の為に保険は掛けていた。
川内が土下座している間に、ひそかに『ザ・プレイグス』で川内の足に触れておいたのだ。
もっとも、川内に改心する気持ちが少しでもあるなら、この“奥の手”は使わないつもりだったが、そう簡単に人間の心は変わらない。
川内のように、他人を不幸にする事を楽しんでいる人間なら、なおさらだった。
「おッ、俺ッ……俺のッ、俺の足がッ!!どッ、どどッ、どうすりゃいいんだよぉ~!!」
しきりに騒ぎ立て、狼狽する川内の後ろから、二人の足音が聞こえてきた。
だが、川内は気付いていない。
鳥のように、せわしなく両手を上下に動かしながら、大声でわめき続けている。
その身体に何かが触れた。
『ザ・プレイグス』の指先だ。
すると、“能力”を“解除”された川内の両足は、徐々に元通りになっていった。
最初は唖然とした川内だったが、やがて気を取り直し、地面の上に立っている足に手を伸ばすと、その感触を確かめる。
「――も、戻ったのか……?はっ……ははは……。ははは……良かった……。な……なんだか知らねーけど、助かったぜ……」
李依に目で合図を送った祐樹は、安心している川内の側面に回り込んだ。
「逃がさないわよ」
「うわッ!?」
李依の声を聞いた川内は、飛び上がるように驚いた。
反応して声のする方に振り向いたが、今度は反対側から肩を叩かれた。
「おい」
「な――うげえぇッ!?」
その相手を見ようとした川内の横っ面に、パワーを限界まで引き上げた『ボトム・オブ・ザ・トップ』の鉄拳がめり込んだ。
荒々しく殴り飛ばされ、もんどり打った川内は、投げ捨てられた空き缶のように地面を転がった。
祐樹と李依が、その両側を固める。
腫れ上がった頬をさすりながら身体を起こした川内が見たのは、全身から炎のような闘志を立ち上らせている二体の“スタンド”の姿だった。
「わ、悪かった。俺が悪かった。謝るよ。だ、だから……な?許してくれよ。そ、そうだ」
川内は、手に持っていたジャケットの内ポケットを探り、この日の最初に盗んだ五万円を取り出した。
それを二人の目の前で広げて見せる。
「こ、ここに五万ある。五万だぜ。こいつをやるからさ。財布に利子付けて返すよ。だから、勘弁してくれよぉ……」
川内の顔を見据えていた祐樹は、掲げられた五枚の一万円札を一瞥した。
視線を戻すと、自らの“スタンド”を伴って川内に近付く。
「ほ、ほら。やるからさ。全部持っていってくれよ。へへへ……」
金を受け取りに来たと思った川内は、紙幣を握っている両手を、更に突き出した。
その刹那、川内の腕に『ボトム・オブ・ザ・トップ』の手刀が振り下ろされた。
「ぐがぁッ!?」
苦痛の声が上がる。
打たれた部分を押さえて、川内は身悶えた。
痛みに耐えかねて取り落とした一万円札が地面に落ちていく。
祐樹は、それらを冷ややかに見下ろしていた。
「――別に要らないな。お前の“便所のハエでも止まらないような小汚い手”で触った汚い金なんて……。どうせ、これも盗んだ金なんだろ?この五万円は、お前自身の治療費にでも充てるんだな。足りないだろうけど」
『ボトム・オブ・ザ・トップ』が、川内の襟を掴んだ。
胸と左肩の“メーター”の“針”が振れ、射程距離と引き換えにスピードが強化された事を外部に示す。
祐樹の迫力に気圧された川内は、助けを求めるような視線を、李依に向けた。
片方の手を腰に当てた李依は、それに対する明確な答えを口にした。
「“一つ、いい事を教えてあげるわ。最後のチャンスというのは、もう次がないから最後っていうのよ。いい勉強になったでしょう?”」
『ボトム・オブ・ザ・トップ』が、固く握り拳を作る。
これから起こる事を悟り、川内の顔は青ざめた。
「親や先生に習わなかった?借りたものはキチンと返すのが、人としてのルールだってさ。あー、そうそう……。財布を返してもらう前に、俺の方こそ、あんたに返すよ。――散々コケにされた分を、たっぷりと利子を付けてな」
「あ……あ……」
川内には――もう何も出来なかった。
「受け取りやがれぇぇぇ――ッ!!」
『ウラウラウラウラウラウラァァァ――ッ!!』
川内が発した悲鳴は、完全にかき消された。
祐樹の勇ましい叫びに呼応した『ボトム・オブ・ザ・トップ』が、荒れ狂う暴風を思わせる凄まじい速度で、怒濤の猛ラッシュを繰り出した。
突き上げるように放たれる両拳は、元々の原型を破壊しかねない程の勢いで、徹底的に川内の全身を叩きのめす。
『ウォォォッ!ラァァァァァッ!!』
力強い雄叫びを轟かせた『ボトム・オブ・ザ・トップ』は、大きくバックスイングすると、これで最後とばかりに一際強烈なパンチを浴びせ掛けた。
「ぶげぎゃあぁぁぁぁぁ――ッ!?」
ひとたまりもなく打ちのめされた川内は、風に煽られたボロ切れのように吹き飛んでいく。
その先には、身構えた『ザ・プレイグス』が待機していた。
「どうぞ」
「――ありがと」
祐樹の言葉を受けて、李依が微笑む。
同時に、『ザ・プレイグス』の太くたくましい腕が唸りを上げた。
「この……“ド”変態野郎がッ!!」
アッパーカットを顎に打ち込まれた川内の身体が宙を舞う。
脳震盪を起こして意識が途切れる直前、周囲の景色と頭上から注ぐ太陽の光が、彼の視界の中で一緒くたに混ざり合った。
次の瞬間、一気に落下してきた川内は、派手な音を立てて、路地裏のゴミ置き場に頭から突っ込んだ。
それを見た祐樹と李依は、ちらりと視線を合わせる。
無様な姿を晒している川内の背中で、心地よい音が響いた。
互いを労うようにハイタッチした祐樹と李依の二人は、連れ立って路地から出て行った。
もちろん、祐樹の財布は回収している。
「そういえば、どうしてあんな奴に情けをかけたんですか?ありゃ、きっと死んでも直らないタイプですよ。なにしろ根が腐ってますから」
「……そうね。でも、相手の事を考えたり、時には許したりするのも、私は大事だと思うわ。今回は通じなかったけど、もしかしたら、どうしても止むを得ない事情を持ってる人もいるかもしれない。ただやっつけてしまうだけじゃなくて、そういう人達の事も考えてあげられる――本当のヒーローって、そういうものじゃないかしら」
「あ……。そ、そうですよね……」
また落ち込みそうになった祐樹を見て、李依は穏やかに笑いかけた。
「難しい話は、これでおしまい。お昼ご飯がまだでしょう?私がおごるわ。何が食べたい?」
「え、マジですか!?いや~、流石は石神さん。何かと頼りになりますよー。あ、そこのファミレス入りません?ドリンクバー安いですから」
実を言うと財布の中身に自信がなかった祐樹は、李依の申し出をありがたく受ける事にした。
一方、二人に叩きのめされた川内航平は、全治一ヶ月と診断されてF市総合病院に入院する事になったものの、二人がそれを知る事はなかった――。

[完]


藍沢祐樹→ファミレスで李依におごってもらうが、店内でクラスメートに遭遇し、説明に困る。
石神李依→祐樹の姉に間違われて、ちょっと嬉しかった。
                                 リ タ イ ア
川内航平→全治一ヶ月でF市総合病院に入院決定・再 起 不 能
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プロフィール

研究員D

Author:研究員D
「ギリギリ映らない画面端にいるエキストラ研究員」のイメージというのが名前の由来。
基本的に特撮ヲタ。
また、マイナーなものに惹かれる体質。
特撮全般および一部のアニメや漫画(マイナー作品とか古いの)を愛する。

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