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『ダーティー・フィンガーズを追い詰めろ』

以下は、前記事の次のお話の導入部です。
では、どうぞ。
既に全体は考えてありますので、二、三日中には投下しまっす……!





その日――面影町の繁華街で、一つの騒ぎが起こっていた。
見るからに柄の悪そうな男が、頭の禿げた中年のサラリーマンに、激しい剣幕で詰め寄っている。
ワイシャツの襟を掴まれているサラリーマンは、ぱくぱくと金魚のように口を動かしているものの、まともな言葉になっていない。
その様子を見て、ますます苛立ちを募らせたらしい男は、更に強い語調で怒鳴り散らした。
「おいッ、おっさんよ!あんまり俺を舐めてっと、しょぼくれたツラを思いっ切りブン殴って、家族でも見分けがつかねえような顔に整形すっぞッ!!ああ!?」
この脅し文句は強烈だった。
完全に震え上がったサラリーマンは、やっとの思いで声を絞り出し、喘ぐように言った。
「ちッ、違うんだッ!私じゃない!“手”が……!私の“手”が勝手に動いたんですッ!」
しかし、その悲痛な自己弁護は、男の心には届かなかった。
むしろ、既に頂点に達しつつあった男の怒りを煽っただけに過ぎなかったのだ。
黙って聞いていた男は、みるみる顔をひきつらせたかと思うと、次の瞬間には、凄まじい憤怒の形相を満面に浮かべて、怯えるサラリーマンを睨みつけた。
「よ~し、よしよしよし……!そうかそうか、テメーの言いたい事は、よ~く分かったぜ!大人しく盗んだ財布を返しゃあ許してやろうかと思ったが止めだ!ちっと、そこまでツラ貸せや!!」
「ひッ……!」
サラリーマンは息を飲んだ。
無情にも、この時点で彼の運命は確定したのである。
たまたま近くを通りかかった通行人や、遠巻きにして様子を窺っていた見物人は、無理矢理に引きずられていくサラリーマンを目撃した。
だが、この哀れな彼を助けようとする者は一人もいなかった。
また、群衆の最後尾に立っていた“たった一人の男”を除いて、彼が無実だという事を知る者もいなかった。
「あ~らま、カワイソーにねえ~」
背後で聞こえるサラリーマンの悲鳴を嘲笑いながら、その“たった一人の男”は、軽やかな足取りで現場から立ち去った。
見た感じでは、まだ若い。
具体的な年齢は、二十歳を超えたくらいだろう。
黒のミリタリージャケットと迷彩色のカーゴパンツに身を包み、濃いグリーンのニット帽を目深に被っている。
両方の耳には、シルバーピアスがぶら下がっている。
横断歩道の信号待ちの列の中に混ざった彼は、ポケットに手を突っ込み、そこから何かを引っ張り出した。
それは、サラリーマンを問い詰めていた件の男から掠め取った財布だった。
中身を確認すると、一万円札が五枚ほど入っていた。
金を抜き取り、それらをポケットに入れると、空になった財布を無造作に放り投げる。
宙を舞った財布は、緩やかな放物線を描いた末に、見事にゴミ箱へ収まった。
「まったく最高だぜ」
人知れずほくそ笑み、その男は呟いた。
こらえきれないらしく、にやついた表情を隠そうともしない。
「『ダーティー・フィンガーズ』さえあれば、食いっぱぐれる事もねえ。退屈な人生とはオサラバして、俺の未来はバラ色だ。一生遊んで暮らせるんだからなあ」
信号が青に変わり、人々は歩き出した。
それに倣い、男も横断歩道を渡り始める。
「おっ、イイ女じゃ~ん」
前方を見つめていた男は声を上げた。
彼の視線の先には、並んで歩く藍沢祐樹と石神李依の姿があった……。

[続]
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プロフィール

研究員D

Author:研究員D
「ギリギリ映らない画面端にいるエキストラ研究員」のイメージというのが名前の由来。
基本的に特撮ヲタ。
また、マイナーなものに惹かれる体質。
特撮全般および一部のアニメや漫画(マイナー作品とか古いの)を愛する。

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