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『二人の“これから”』

まずは謝罪を申し上げます。
本来なら、前回の続きから投下するべきなのですが、当初に予定していた敵スタンド能力が原作のスタンドとモロ被っていた事に気付いたため、ただいま練り直しております。
ですが、まだまだ時間が掛かりそうなので、時系列的には、その後のお話からうpしていく事にしましたッ……!
そして、やっぱり町の名前を決めたいッ!ということで、名前を付けてみましたッ……!
という訳で、以下からどうぞッ……!





藍沢祐樹と石神李依の両名が暮らす面影(おもかげ)町は、地方都市F市の南部に位置している。
中心部にある繁華街や、そこから離れた閑静な住宅地に交じって、自然の山や草木も数多く残っており、空気が澄んでいるのが特徴の一つだ。
こうした住みやすい環境から、いわゆる郊外のベッドタウンとして、面積の規模は小さいながら、それなりに発展を遂げてきた。
ほんの少し前まで、この町は、今までと変わらず穏やかで、いつも通りの平和を保っていたのである。
しかし、二ヶ月ほど前を境に、町を取り巻く状況は大きく変わり始めた。
この町に流入した特殊な意味を秘める“矢”と、それを使う“矢の男”が引き金となって、立て続けに奇怪な事件が起こるようになったのだ。
“矢”で射抜かれた一部の人間や動物は、その内に眠る超自然的な能力――“スタンド”を引き出される。
“スタンド”とは、生命エネルギーが生み出すパワーを持つヴィジョンであり、これを駆使する事が出来る存在を“スタンド使い”と呼ぶ。
また、“スタンド使い”以外の者に“スタンド”を見たり感じたりする事は叶わない。
“スタンド使い”の中には、手に入れた能力に溺れて欲望の赴くままに行動する者もおり、それが常識を越えた奇妙な事件に繋がる事も少なくなかった。
だが、現在の警察や法律に“スタンド使い”を取り締まる事は不可能なのだ。
つまり、次々に表面化する事件の原因を知り、ひいては面影町に生じた変化を認識できるのは、先に述べた藍沢祐樹と石神李依を含む“スタンド使い”をおいて、他にはないのである。
同じ“矢の男”の手により、期せずして“スタンド使い”となった二人は、敵として出会った一ヵ月後に思わぬ再会を果たした。
友人との待ち合わせで街に出ていた祐樹は、恐るべき“スタンド使い”と化して警察病院を脱走し、凄惨な殺戮を行う凶悪犯罪者――多田羅賢と戦う李依を目撃したのだ。
最初は、李依に対しても警戒心の残っていた祐樹だったが、自分を逃がそうとして果敢に突っ込んでいく彼女の姿を見て、考えを変えた。
恐怖心から、言われた通り一度は逃げ出したものの、明らかに劣勢だった彼女を案じる気持ちを拭い去る事は出来なかった。
――あのままだと、あの人は確実に殺される。警察だって、あいつは止められない。あの人を助けられるのは、同じ“能力”を持ってる俺しかいない……!
立ち止まり、踵を返した祐樹は、全力で走り出した。
自らの“スタンド”を抜き放つと同時に、背後から多田羅を殴り飛ばし、李依の危機を救ったのだ。
こうして、わだかまりの解けた二人は、互いの力を合わせて強敵に立ち向かった。
その結果、辛くも多田羅を打ち倒す事に成功したのである。
戦いが終わった後で、祐樹は負傷していた李依に肩を貸し、李依も祐樹を気遣った。
また、この事件がきっかけとなって、二人は徐々に親交を深めるようになっていった。
まだ一度だけとはいえ、命懸けで共闘した仲間という意識――そして初めて知り合った“スタンド使い”同士という共通点が、彼らの間にあった溝を埋めていったのだ。

多田羅との戦いがもたらしたものは、それだけではない。
特に、祐樹に与えた影響は大きかった。
十代の少年に特有のナイーブな繊細さを抱え、“生き方”という非常にデリケートな問いに関して、今まで一人で悩んできた彼にとっては、その解答を得る為の大きな契機となったのだ。
十七年間の人生を歩んできたものの、それまでの藍沢少年には、青春を賭けて全身全霊で打ち込めるもの――胸を張って、これが自分の“生き甲斐”だと叫べるものが何一つなかった。
これが昔なら、まだ良かった。
しかし、進学するに従って、周りの友人は部活なり趣味なり熱中できる何かを見つけて、学生生活や私生活の中で色々な事を達成していく。
そこで祐樹は、自分には何もない事に気付いたのだ。
夢も熱意も目標もなく、ただ張り合いのない日常生活を送るだけの自分に、どうしようもない焦りと曖昧な不安を感じるようになった。
毎日の中で生き生きと輝いている友人達を見ると、自分だけ置いて行かれているような気がしたものだ。
同じ学校で、同じ時間を過ごしていても、自分とは大違いではないか。
彼らに追い付きたいと思っても、これだという“生き甲斐”がないから、何をするにも、なんとなくやる気が出ない。
やる気が出ないから、皆に負けない“自分だけの生き甲斐”を見つけてやろうという気力も湧いてこない。
そうする内に、だんだん自信もなくなっていく。
悪循環だった。
友人達の前では、掴み所のない飄々とした男を装っていても、その心は常に不安定で、自分に対する嫌悪感で満ちていたのだ。

藍沢祐樹は、人生で最も大切なものは、心の中に“柱”を持つ事だと考えている。
自分だけの“柱”――“生き甲斐”や“信念”と言い換えても良い――を持つ人間は、どれだけ強く揺さぶられようが、決して不安定になる事はない。
その“心の柱”を持たずに生きるというのは、まるで大黒柱のない民家で暮らすようなものだ。
いつ倒壊するか分からないような家に住んでいて安心できる筈がない。
まさに藍沢少年の心は、そのような状態だったのである。
“心の柱”を持つ事が出来ない自分自身が大嫌いだった。
また、その一因である自分の優柔不断な面が発現したかのような“能力”を持つ“スタンド”――『ボトム・オブ・ザ・トップ』も好きになれなかった。
自分の中にある嫌いな面を見せつけられるのは、良い気がしない。
もっとも、優柔不断であるというのは、裏を返せば、物事を深く考えているという事でもある。
そういう意味では、必ずしも悪い一面だとは限らない。
しかし、祐樹自身は、そうは思っていなかった。
だからこそ、無意識の内に『ボトム・オブ・ザ・トップ』を拒絶し、出さまいとしていたのだろうと思う。
そんな中で、嫌でも“スタンド”を使わなければならない状況が訪れた。
それが、『ザ・プレイグス』を操る“スタンド使い”――石神李依との遭遇である。
結果こそ敗北に終わったが、この戦いは、必死に応戦した祐樹を少しだけ成長させた。
自分の分身である“スタンド”を、はっきりと“自覚”した上で、それを自分の一部として認められるようになったのだ。
ただ、李依を相手にした戦いは、あくまで自衛の為のものであり、自発的なものではなかった。
よって、祐樹の心には、まだ明確な“柱”は生まれていなかった。
だが、つい一週間前の多田羅賢脱走事件と、それによる死闘は、祐樹に自信を付けさせると共に、心に芽生えていた“自覚”を“決意”に昇華させた。
“スタンド使い”の脅威から人を守る事が出来るのは、同じ“スタンド使い”だけだ。
“矢の男”の活動によって“スタンド使い”が増え続けている以上、これからも“スタンド”に傷付けられる人間が必ず出て来るだろう。
それを言葉ではなく心で理解した時、祐樹は“決意”した。
即ち、危機に陥っている誰かを助けられる“スタンド使い”になる事――“そうした行動によって自分自身を誇れるスタンド使い”になる事が、藍沢祐樹の“自分だけの心の柱”となったのである。

「つまり、俺と石神さんの“スタンド”は、基本的な部分は似たようなタイプだっていう事みたいですね。俺の『ボトム・オブ・ザ・トップ』は、使い方によっては遠くまで行けますけど……」
「そうね。その分、攻撃する時の連携は取りやすいと思うわ。でも、“スタンド”が精神から生まれるものなら……。私達と全然違うタイプの“スタンド”もいるのかもね」
「お待たせしましたァ~!コーヒーとカフェオレ、ポーランド風チーズケーキのストロベリーソース添えでございますゥ~」
二人の話に割って入るかのような勢いで、賑やかな女性店員が、注文の品と伝票を置いて立ち去って行った。
彼女の胸元には、“七森”と記された名札が揺れていた。
多田羅賢を再起不能にし、再び警察病院に送り返した二人は、ある喫茶店で顔を合わせていた。
まだ未熟な祐樹が、“スタンド”について、李依から教えを受ける為だ。
「――なんていうか……。ちょっと……というか、かなり恥ずかしい話なんですけど……。あー、やっぱり止めときます。絶対に笑われるわ」
話が一通り終わってから、藍沢祐樹は、おそるおそる切り出した。
彼の隣に座っていた李依が、静かに微笑む。
目を引く明るい金色の短髪、眼光の鋭いシャープな顔立ち、一見して鍛えられている事が分かる筋肉質のスラリとしたシルエット――元ボクサーならではの、極めて攻撃的な外見とは裏腹に、柔らかく優しい微笑だった。
現在の李依は、プロボクサー時代に取得していたインストラクターの資格を生かして、面影町の一角にあるスポーツジムで、女性向けのエクササイズの指導員として働いていた。
教え方が丁寧な点と、中性的な整ったルックスから、訪れる女性客には人気があるらしい。
「なあに?続きが聞きたいな。笑わないから言ってみて」
その言葉を受けた祐樹は、迷った末に、また口を開いた。
しかし、やはり気が進まないらしく、言い淀みながら話を続ける。
「あの……。俺、小さい頃はヒーローに憧れたりした事があったんです。アメコミで言えば、スーパーマンとかバットマンとかいうアレですよ。いや、男なら誰でも通る道なんでしょうけど、なんか最近になって急に思い出しちゃって……。で――もしかして今なら、その夢も実現できるんじゃないかな……って。そういう強くて頼れる男になりたいなー……なーんて……。あ、あははは……」
てっきり笑われると思って、乾いた笑いで誤魔化した祐樹だったが、意外な事に李依は笑わなかった。
それどころか、真剣な表情を浮かべ、祐樹に向き直ったのだ。
「……なれるわ。きっと」
彼女の言葉は、どこか悲哀を背負っているような、切実な響きを伴っていた。
これを受けた祐樹は、何故だか胸に込み上げてくるようなものを感じていた。
そして、その思いを乗せて、たった一言だけ答えた。
「はい……!」

[完]
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プロフィール

研究員D

Author:研究員D
「ギリギリ映らない画面端にいるエキストラ研究員」のイメージというのが名前の由来。
基本的に特撮ヲタ。
また、マイナーなものに惹かれる体質。
特撮全般および一部のアニメや漫画(マイナー作品とか古いの)を愛する。

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