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ヴァルキュリアの憂鬱(前編)

突発的なもの第二弾。
26年前から連載されているにもかかわらず、掲載紙を転々としつつ未だに連載中、単行本も27巻が最新という漫画がありまして。
ファンの間では、作者が生きている間に完結するのかとさえ言われています。
タイトルは「強殖装甲ガイバー」。
内容は特撮番組的な要素を含む変身ヒーローものです。
何度かアニメ化されており、またハリウッドで二度実写化されたり、フィギュア化したりと一部では有名なのですが、やはりマイナージャンルに入る漫画です。
以下は、その中の登場人物の一人であるヴァルキュリアという女性キャラを主役にした二次創作です。








人気のない深夜の森を、素足で走る人影があった。
艶のある唇が開き、その隙間から短い呼気が漏れる。
土が剥き出しになっている地面を、すらりとした色の白い脚が蹴った。
その腿から腰に至るまでのラインは、かき抱きたくなる衝動を起こさせる程に、優美な曲線を描いている。
奇妙なことに、彼女は靴どころか、身体を覆うものは何一つ纏っていない。
きめ細かい肌に加えて、均整の取れた芸術品を思わせる裸身を、冷たい外気に惜しげもなく晒している。
背中まで届くブロンドや、彫りの深い深い欧州風の顔立ちは、目の覚めるような美しさだ。
しかし、露になった彼女の姿から受ける印象は、決して下品なものではなく、むしろ何者にも侵されることのない凛とした気品が感じられた。
強い意志が込められた眼差しは、毅然とした光を宿して正面を見据えている。
これら一連の光景は、背景の自然と相まって、見ようによっては幻想的でさえあった。
絵画から抜け出した美の女神――そんな表現をする者もいるかもしれない。
駆ける途中で尖った石を踏みつけたのか、その表情が僅かに歪む。
だが、立ち止まってはいられない。
彼女は走り続け、やがて開けた場所に出た。
中央には、淀んだ水を湛えた沼が、月明かりを反射して静かに煌いている。
不意に気配を感じた女が立ち止まり、警戒するように視線を巡らせた。
その刹那、濁った沼の中から、何か大きなものが飛び出してきた。
見るも恐ろしい容姿を備えた、筋骨隆々たる体躯の奇怪な怪物だ。
悪鬼が牙を剥き、今にも裸体の美女に襲いかからんとしている。
これこそ幻想の具現化――まさに御伽噺の情景に思えるが、そうではなく、紛れもない現実だった。
忽然と現れた怪物は、今や全世界を統治する存在となった組織――“クロノス”の一員として活動する生物兵器なのだ。
“降臨者”と呼ばれる異星人が、地球上に残した遺跡には、現代の科学力を遥かに超越した数多くのオーバー・テクノロジーが眠っている。
そこから発見された遺伝子操作技術を用いて、人間を“調整”――結果として生み出されるのが、“獣化兵(ゾアノイド)”と総称される改造兵士である。
しかし、迫る獣化兵を前にしても、女は逃げ出さなかった。
胸を張り、背筋を伸ばして、高らかに発声したのだ。
「――適合(アダプト)!!」

次の瞬間、女を包むような形で、大きな衝撃波が発生した。
一種のエネルギー障壁――バリアである。
それは、彼女の背後に林立する木々を、容易くなぎ倒す。
女が行った行為の真意は、立ち向かう意思を明確化し、己を戦闘形態に切り替える為のものだったのだ。
その証拠に、土埃の止んだ後に立っていたのは、先程までの裸体の女ではなかった。
シャープなフォルムと攻撃的な雰囲気を持つ細身の怪人が、楔形の眼で獣化兵を見下ろしている。
全体としての印象は、極めて生物的なものだが、緩やかな弧を描いて伸びる角の下――額の中心に位置する部分には、金属の台座と、それと組み合わさった金属球が嵌っている。
それ以外の頭部側面や、人間で言う口に当たる箇所、腰などの身体各部にも、大きさこそ違うが、額のものと似た形の金属球が埋まっていた。
これが、元クロノス監察官の女――現在は反逆者であるヴァルキュリアの、もう一つの姿なのだ。
その根源は、計り知れない戦闘力と自己再生能力を秘めた“強殖細胞”と、その機能を制御する額の金属球――“コントロール・メタル”の二つの要素から成る“強殖装甲”にある。
この強殖装甲と生体が有機的に結合して一体化、即ち“殖装”し、“殖装体”と名付けられた形態になることで力を発揮する。
特に、人類の殖装体は、他の生物が殖装した場合と比較にならない程の性能を持つため、降臨者から規格外の意味を持つ“ガイバー”という名前を与えられているのだ。
また、この世界に現れたガイバーは一体ではなく、幾つか存在する。
ヴァルキュリアが殖装したガイバーは、紫色を帯びており、“ガイバーⅡF”と呼称されていた。
クロノスの命を受けてヴァルキュリアを追跡してきた獣化兵も、ガイバーの恐るべき威力は知っている。
殖装を目の当たりにして怯んだが、命令に背く訳にはいかない、
すぐさま気を取り直し、ガイバーⅡFに向かって猛然と突進した。
対するガイバー=ヴァルキュリアは余裕の表情だ。
すると、木立の奥で、がさりと物音がした。
先陣を切った獣化兵に続けとばかりに、ガイバーⅡFの四方から、複数の獣化兵が次々に現れ出る。
しかし、ヴァルキュリアには微塵の焦りもない。
何故なら、ガイバーの両側頭部に備わっている“ヘッド・センサー”――三次元的な探査機能を持つ二つの金属球――は、彼らが姿を見せる以前から、その存在を感知・捕捉し、コントロール・メタルを通して、ヴァルキュリアに情報を伝えていたのである。
「ふん」
ヴァルキュリアは、彼らの下策を鼻で笑う。
彼女の意思に応じて、ガイバーの肘部から生えている鋭い突起が、上方向に伸長する。
高周波で振動し、対象の分子結合を解くことで、あらゆる物体を切断する刃――“高周波ソード”だ。
力強く拳を握ったガイバーⅡFは、腕を振るって、正面から向かってくる敵を斬り伏せた。
一撃で胴体を分断された獣化兵の巨体が崩れ、その死体は瞬く間に腐食して消滅した。
身体機能の停止と同時に、機密保持の為に体内に仕込まれた分解酵素が働いたのだ。
それに構うことなく、ガイバーⅡFは、返す刀で振り向きざまに再びソードを操る。
唸りを上げる刃が、後ろから掴みかかろうとしていた獣化兵の頭を斬り飛ばした。
当然の如く、後には死体さえ残らないが、獣化兵の群れは、仲間の死に目もくれずに、ガイバーめがけて襲い来る。
ガイバーⅡFは、慌てることなく、その場で軽やかに跳躍して身を躍らせ、包囲されるのを回避した。
空中で反転したガイバーの頭部――コントロール・メタルの上にある結晶体が発光する。
瞬間、細い光線が立て続けに連射され、三体の獣化兵の背中を死角から撃ち抜いた。
“ヘッド・ビーム”と呼ばれる、体内の余剰熱を利用したレーザーが照射されたのだ。
残る敵は二体のみとなった。
着地したガイバーⅡFは、両の拳を開いて前方に突き出した。
そこに、局所的な強い重力が生じる。
腰の金属球――“グラビティ・コントローラー”を駆使し、手の中に、極小サイズのワームホールを作り出しているのだ。
これを蒸発させることで生まれた衝撃波を、凄まじい速度で解き放ち、残りの獣化兵に叩き込む。
ガイバーの重力兵器――“プレッシャー・カノン”である。
チャージの時間を短縮した低威力版だが、並みの獣化兵が相手なら、仕留めるには十分だ。
腹部に大穴が開いた二体が倒れ、ヴァルキュリアを襲った獣化兵達は遂に全滅した。
最も、ガイバーにとっては、この程度の獣化兵など、たとえ数十体まとめて来ようとも、数の内には入らない。
実際、この戦いが始まってから終わるまでの時間は、一分にも満たなかった。
それにもかかわらず、ヴァルキュリアが最初は戦おうとしなかったのには理由がある。
「うッ?」
突然、コントロール・メタルが異音を発し、全体から火花が散った。
それに伴い、メタルと直結しているヴァルキュリアの脳に危険信号が伝わる。
――くッ……殖装……解除……!
強殖装甲がヴァルキュリアの肉体と分離し、虚空の彼方へ消えていく。
殖装され、特定の対象を記憶した強殖装甲は、このように異次元に格納されている。
対象――つまり“殖装者”の呼びかけに応じて、空間内に出現するのである。
後に残され、呆然と佇むヴァルキュリアの裸身には、玉の汗が滲んでいる。
――このところ余りにも連戦だったせいか、やはり一度の稼働限界が短くなっている……。いかんな……。
ヴァルキュリアは舌打ちし、目下の問題に対して頭を働かせる。
彼女が殖装した“ユニット”――強殖装甲の初期状態である形態を指す――は、不完全なものなのだ。
クロノスが遺跡から発見したオリジナルのユニットと違い、クロノス科学陣が開発した“人造コントロール・メタル”が制御装置として組み込まれている。
詳しい経緯は省くが、クロノスのアリゾナ本部に保管されていた強殖細胞のサンプルと、北米支部が管理していた人造コントロール・メタルの試作品を奪取したヴァルキュリアは、自らの目的を果たす為にユニットを構築し、殖装を行った。
こうしてガイバーとなった彼女は、クロノス北米支部統制局舎“ピラーズ・オブ・ヘブン”の内部を破壊すると共に離反――以降は反逆者として追われることになり、延々と続く戦いに身を投じることになったのだ。
先述したように、ヴァルキュリアが殖装したユニットは、オリジナルではなく、いわば模造品である。
だが、戦闘面における実質的な性能は、オリジナルと変わりない。
その点は、追跡されながらも、これまで無事でいられたことが証明している。
ただし、完全なものでない以上、やはり弊害はある。
衣類が再構成されないために、殖装を解除するつど全身の肌を晒すことになるのも、弊害の一部だ。
そのせいで、いつも代えの衣服に悩まされることになる。
だが、そんなことは今はどうでもいい。
問題なのは、もう一つの弱点――人造コントロール・メタルの稼働限界だ。
もし万が一、コントロール・メタルが稼働限界を越えれば、強殖細胞の増殖と暴走を抑えられなくなる。
そうなった場合、殖装者であるヴァルキュリアは、制御不能に陥った強殖装甲に、文字通り食われてしまうのだ。
――皮肉なものだな。追っ手よりも厄介なのが自分の身体だとは……。
さっきの七体と戦う少し前にも、別の獣化兵の一団と交戦したのだが、その時も同じようなことが起こった。
幸い、戦闘自体には苦戦していないとはいえ、命にかかわることだけに、どうしても気になる。
時間を置けば回復してくれるかもしれないが、この先も連戦状態が続くようであれば、危険は避けられないだろう。
「とりあえず、スーツケースの置いてある場所まで戻らないと……」
いつまでも、こんな格好でいる訳にもいかない。
思考を一時中断し、ヴァルキュリアは歩き出した。
しかし、殖装を解除した彼女は気付いていなかった。
というより、気付けなかった。
闇の中で、その背中を睨む眼があるということに――。

[続]
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プロフィール

研究員D

Author:研究員D
「ギリギリ映らない画面端にいるエキストラ研究員」のイメージというのが名前の由来。
基本的に特撮ヲタ。
また、マイナーなものに惹かれる体質。
特撮全般および一部のアニメや漫画(マイナー作品とか古いの)を愛する。

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