FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

鋼鉄の要塞を打ち砕け――その1――

『ザ・プレイグス』と『ボトム・オブ・ザ・トップ』の戦闘から二ヵ月後――。
その時に起きた脱獄事件において中心人物であった石神李依は、先の行動にもかかわらず仮釈放を許され、残りの刑期を外の世界で過ごすことになった。
これには、彼女の担当弁護士が変わったことが大きく関係していた。
どういった手を使ったかは分からないが、優れた手腕を持つ彼の働きによって、李依は自由の身になったのである。
現在、当の彼女は、その弁護士が運転する車の助手席で、収監前に住んでいたワンルームマンションに向かっていた。
カーラジオからは、艶のある女性ボーカルの洋楽が流れている。
DJの紹介によると80年代にヒットしたものらしいが、李依は、その曲を知らなかった。
他にすることもなく、しばらくの間、それに耳を傾けていると、弁護士の男が話しかけてきた。
「――いや、なかなか苦労しましたよ。ここまでこぎつけるのにはね。なにしろ“被害者”の父親の影響力が強いものですから」
そう言ってハンドルを切り、ギアチェンジする。
彼の口調は気さくで、自然と聞き手をリラックスさせるような響きがあった。
「……聞いてもいい?」
窓の外に目をやりながら、李依が尋ねた。
「どうぞ」
「どうして、こんなに良くしてくれるの?」
「当然でしょう。私はあなたの弁護士ですよ。それに……あなたの境遇には、私は個人的に同情もしていますからね。その分だと思って下さい」
李依は、それ以上は突っ込まなかった。
そうするのが怖かったのかもしれない。
過去には戻れないとはいえ、せっかく自由になれたのだ。
とにかく今は、その思いに浸っていたい。
それから30分ほど経つと、目的地に到着した。
ドアを開け、李依は車の外に出た。
「では、これで失礼します。また何かあったら、連絡して下さい。出来るだけ早く手を打ってあげますから」
車の窓が開き、そこから彼は名刺を手渡した。
――弁護士の男は、“同情している”という言葉の先を言わなかった。
彼が李依に共感を覚えた最大の理由は、彼自身も『スタンド使い』であったからである。
事件を知った彼は、李依が自分と同じ特殊な人間であると確信した。
そして、元々の弁護士を押し退けた上で李依の弁護士となり、その口添えによって、今回の仮釈放が実現することになった。
仕事には“能力”を使わないというのがポリシーであったが、李依の処遇が好転したのは、彼が例外的に“能力”を使用した結果だった。
――まあ、今回は仕方がないでしょう。服役中の彼女が模範囚だったといっても、普通の手段では限界がありましたからね。
「ありがとう」
名刺を受け取った李依は車を見送り、かつて住んでいたマンションを見上げた――。

いつか娘が帰ってくることを信じて家賃を立て替えてくれていた両親に、李依は心の中で深く感謝した。
部屋の中は特に変わりなかったが、李依が大事にしていた鉢植えのサボテンが枯れてしまっていた。
ペットを飼いたいと思っていたのだが、生憎このマンションはペット禁止だし、当時は自分の世話だけで手一杯だった。
もし飼うなら、最後まで責任を持って可愛がってあげなくてはいけないと考えていた李依は、“世話が足りないばかりにペットを苦しめることになるのではないか”という不安があった。
だから、せめて植物を育てようと思い、園芸店でサボテンを購入したのだった。
誰にも言ってないが、オフィーリアという名前まで付けていたのだ。
それほど、このサボテンを可愛がっていた。
最後まで責任を持って世話をし、たくさん愛してあげようと思っていた。
それなのに、結局はこのザマだ。
――私のせいで……“この子”は死んでしまった。
数年間――李依には永遠とも思えるくらいに長かった。
枯れて死骸となったサボテンの成れの果てを見て、李依は、失ってしまった時間の重さを改めて意識させられた。
そして、“自分の世話が足りなかったばかりに死んでしまった”サボテンのことを思い、一人で静かに涙を浮かべた――。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

研究員D

Author:研究員D
「ギリギリ映らない画面端にいるエキストラ研究員」のイメージというのが名前の由来。
基本的に特撮ヲタ。
また、マイナーなものに惹かれる体質。
特撮全般および一部のアニメや漫画(マイナー作品とか古いの)を愛する。

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
現在時刻
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。