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打ち寄せる波は砂の城を崩す―その5―

「『プレイグス』ッ!!」
『ザ・プレイグス』に追随して現れた李依が、険しい表情で命令を下す。
この期に及んで、まだ少年が『スタンド』を出そうとしないことに疑問はあったが、攻撃を躊躇う理由にはならない。
なんといっても、余裕がないのだ。
右手で握り拳を作った『プレイグス』は、本体である李依の意志に従い、標的として捉えた少年に容赦なく殴りかかった。
「うわッ……!」
対する少年は、自身の『スタンド』を出して抵抗を試みるどころか、全くの無防備状態だ。
彼は、『スタンド』の扱い方を、よく分かっていなかった。
何故なら、少年が『スタンド』を見せたのは、三週間前に『矢』で射抜かれた直後だけなのだ。
それすら自分の意志で出した訳ではない。
つまり、少年は『スタンド』を“出さなかった”のではなく、“出せなかった”のだ。
だが、彼は幸運だった。
よろめいて、偶然にも足下にあった潰れた空き缶を踏んでしまい、後ろ向きに倒れたことで、『プレイグス』が放ったパンチの命中コースから外れたのだ。
しかし、攻撃は止まらない。
仰向けに倒れた少年に、続けて繰り出された『プレイグス』の左腕が迫る。
「うおぉッ!?」
咄嗟の判断で、身体を横転させて、ぎりぎりで難を逃れる。
この行動によって、単に攻撃を避けるだけではなく、多少の距離を稼ぐことに成功した。
「くッ、来るなよ!来んなって言ってんだろ!」
後ずさりながら、震える声で少年が喚く。
少し前に雨が降って地面が荒れていた為、着ていた制服は泥まみれになっている。
――クソッ!最悪だ!財布落とすわ携帯なくすわ……。しかも、どうしろってんだよォー!?
もし、今の心境を表現するとしたら、さながら何気ない日常に伏せられた非日常へと至る落とし穴――突然そこに突き落とされたような気分だとでも言えばいいだろうか。
とても何かを考えてなどいられない状況だが、それでも少年は、必死に頭を働かせていた。
“考え”、“決断”し、“行動”する。
それだけが、この危機を打開する唯一の対策だと悟ったからだ。
――まず、逃げるっていう選択肢は“不正解”だ……。とても逃げ切れる気がしない……。かといって、いつまでかわしていられるか……。
訳も分からず追いつめられている自分は、もちろん必死だが、この女は、それ以上に本気なのだろう。
彼女の全身から発散されている気迫が、それを雄弁に物語っている。
そんな人間を前にして、消極的な対応を選んでいては、ジリ貧になっていくばかりだ。
だとすれば、“正解”の選択肢は一つしかない。
――俺が無事でいる為に必要なのは、“積極的行動”……“反撃”するしかない!
一方の李依は、少年が予想以上の立ち回りを演じる様子を見て、意外に思うと同時に苛立ちを募らせていた。
そのせいで、『プレイグス』の攻撃が幾らか大振りになっていたのも、少年にとっては有利な要素だった。
――可哀想だと思ったから、せめて一発で終わらせてあげようとしているのに、ちょこまかと……。
「ちッ!」
すぐさま踏み込んで、一気に間合いを詰める。
プロボクサー時代の鍛錬によって身体に叩き込まれた軽快なフットワークだ。
起き上がろうとしている少年をめがけて、『プレイグス』による右のストレートパンチが飛んだ。
だが、攻撃したのは、少年の方が早かった。
いつの間にか、彼は“武器”を掴んでいたのだ。
思い切り腕を振り、『プレイグス』に向かって、それを横殴りに叩きつける。
転がった先の地面に落ちていた手頃な大きさの“鉄パイプ”を、気付かれないように拾っておいたのだ。
だが、李依の反応は、あくまでも的確だった。
即座に無駄な勢いを殺して攻撃を中断した『プレイグス』によって、“鉄パイプ”は、あっさりと受け止められてしまった。
『プレイグス』の手に触れている先端部分から、“鉄パイプ”が“砂”に変わっていく。
少年は知らなかったが、『スタンド』は『スタンド』でしか傷付けられない。
たとえ人間が直接『スタンド』を攻撃しようとも、何ら成果は得られないのである。
従って、命中の如何に関係なく、少年の攻撃は最初から無意味だったのだ。
――やっと抵抗らしい事をしてきたようだけど……。そんなものが『スタンド』に通用するとでも思っているの?
これで分かった。
この少年は、はっきり言って“ド素人”だ。
闘うということに対してもだが、『スタンド使い』としての知識や経験も圧倒的に不足している。
彼がいつ『スタンド使い』になったのかは知らないが、つい最近のことだと思う。
恐らく、『スタンド』をまともに出したことさえないのではないだろうか。
でなければ、この土壇場で、こんな意味の無い行動をとる筈がない。
実際は、少年よりも後に『スタンド使い』になった李依だったが、彼女の場合は、嫌でも『スタンド』を使わざるをえない状況に置かれていた。
これによって、李依は、極めて短い期間で、『スタンド』を完全に使いこなすことが出来たのである。
そして、もう追いかけっこは終わりだ。
次の“一手”で決着がつく。
「――これ……で……!?」
李依は、はっとした表情で、少年の背後に素早く視線を移した。
そこに、新たな闖入者の気配を感じ取ったのだ。
彼女の判断は正しかった。
――奇妙な人影が、『プレイグス』に向かい合うかのように立っている。
“それ”は、力をみなぎらせるかのように右腕を大きく引いて、正面に構えていた。
――しまったッ!“これ”はッ……!
「プレイグッ……!」
防御しようとしたが、目の前にいた少年に注目していた李依は、“一手”遅れてしまった。
勢いよく叩き込まれた右拳が、『ザ・プレイグス』の肩を直撃する。
「くッ!?」
衝撃が走り、体勢が崩れた。
その隙を見逃さないとばかりに打ち出された左の拳が、吸い込まれるように胸に命中し、『プレイグス』を後方へと押し返す。
自分の分身である『スタンド』を殴り飛ばされた李依の身体はバランスを失い、泥水を湛えた水たまりの中に倒れ込んだ。
濁った飛沫が、太陽の光を反射して輝きながら、辺りに飛び散っていく。
『スタンド』と本体は一心同体――よって『スタンド』に起こったことは、一部の例外を除いて本体にも影響を与えるのだ。
――“これ”が……あの子の……!
泥に汚れながらも、李依は、少年の後ろにいる者を睨みつけた。
「こッ……“こいつ”はッ!?」
同時に、振り返った少年は、自分の傍らに立つ者を見て、思わず声を上げた。
少年自身が“幽霊”だと信じていた彼の『スタンド』――『ボトム・オブ・ザ・トップ』は、二人の驚きなど意に介していないといった風で、静かに佇んでいた……。
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プロフィール

研究員D

Author:研究員D
「ギリギリ映らない画面端にいるエキストラ研究員」のイメージというのが名前の由来。
基本的に特撮ヲタ。
また、マイナーなものに惹かれる体質。
特撮全般および一部のアニメや漫画(マイナー作品とか古いの)を愛する。

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