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打ち寄せる波は砂の城を崩す―その1―

【スペシャルサンクス:ウタカタ先輩】

7月16日、AM2:00――。
日本の何処かにある、何の変哲もない静かな町――N市S町。
一人の女が、ここから東に向かおうとしていた。
それは偶然だったのかもしれないし、あるいは、一種の“引力”によって引き寄せられた結果なのかもしれない。
しかし、今の彼女の頭の中にあるのは、たった一つのシンプルな考えだけだった。
“逃げ延びる”こと。
“能力”の発現と共に、思いがけず手にした“自由”への可能性……。
それを守り通したいというだけが、彼女の身体を突き動かす。
胸に抱かれた強い思いは、単なる執着心を超えて、強迫観念に近いものがあった。
――早く……早く逃げなければ……。どこか遠い所へ……“追っ手”の手が届かない所まで……。
人目につく大通りを避けて入り込んだ、暗く寂しい一本道。
その突き当たりから脇に入った所にある、水はけの悪く、汚い路地から顔を覗かせて、周囲の様子を伺う。
女の服装は、タンクトップに細身のジーンズという、至ってラフな格好だ。
壁に身を寄せ、息を潜めて注意深く観察する。
どうやら、まだ見つかってはいないらしい。
だが、安心など出来ない。
“追っ手”の包囲は徐々に狭まってきている。
本格的な非常線が張られる前に、この町から脱出しなければならない。
その為には、移動手段が必要だ。
出来れば車を手に入れたいが、誰にも気付かれずに済ませる必要がある。
万が一、通報されれば元も子もない。
「ヘイ、ネエチャン。そこで何やってんの~?」
女が振り向いた先にいたのは、ねちっこい笑みを顔に張り付かせた四人の男達だった。
彼らのだらしない服装や軽薄そうな口振りから、ロクでもない人間であることは一目で分かる。
さっさと何処かへ行って欲しい――そんな彼女の願いなど知らない男達は、馴れ馴れしい態度で近寄ってきた。
「俺達さぁ~、今すっげえヒマしてんだよねェ~。良かったらさァ、一緒に遊ばない?」
女は何も答えずに、彼らの横を通り過ぎようとする。
だが、先頭に立っていた男が、剥き出しになっている彼女の腕を無遠慮に掴んだ。
すかさず示し合わせていたかのように、残りの男達が女を取り囲む。
どうやら、相手の意思に関わらず、逃がさないつもりでいるらしい。
これが、いつもの手口なのだろう。
「ツレないなァ……。いいじゃんかよォ~。どうせ、お姉さんもヒマっしょ?でなきゃ、こんな時間に、こんなトコいねーもんなァ?」
リーダー格と思われる男が、女の頬を軽く撫でる。
他の三人は、締まりのない薄ら笑いを浮かべたままだ。
「……ス」
今まで、ただの一言も発しなかった女が、ぽつりと呟いた。
鮮やかな発色を放つ短い金髪の下で、女の瞳が一瞬、きらりと輝いた。
「あ?うわっ、とっと……」
女の腕を掴んでいた男が、突然バランスを崩してよろめき、仲間の一人にぶつかった。
何だか分からないが、右肩の辺りに“違和感”がある。
急に、そこだけが軽くなったような、奇妙な感覚だ。
「うッ、うわッ!うわあああぁッ!?」
次の瞬間、男は“違和感”の正体を理解し、悲鳴を上げた。
どうりで軽くなる筈だ。
なにしろ、あるべきものが“なかった”のだ。
ついさっきまであった筈のものが、そこに“なかった”。
――右腕が“ない”。
更に言えば、痛みも、こうなるような何かをされた感触もなかった。
もっとも、『一般人』に過ぎない彼には、そんなことを考える余裕さえなかった。
恐怖と混乱によって錯乱状態に陥った男は、台所でゴキブリを見つけた女学生のように、喚き散らしながら路地から飛び出そうとした。
だが、彼の身体は一歩たりとも動いていなかった。
彼には、もう足がなかったのだから――。
「た……助けッ……」
――その言葉を最後に、彼は、その場に“ぶちまけられた”。
残った三人は、未だ状況が飲み込めていないが、自分達が置かれている状況の異様さだけは分かったようだった。
先を争って、来た時とは逆方向に走り出す。
しかし、逃げても逃げなくても、行き着く先は同じなのだ。
皮肉なことに、男達の意思に関わらず、たとえ一人であろうと、女は彼らを逃がすつもりはなかった。
――最初の男を黙らせた女の傍に、いつの間にか別の何者かが立っていて、離れていく三人の方に身体を向けている。
遠目から見れば人のような姿にも見えるが、シルエットがおかしい。
その何者かは、首から上が“なかった”のだ。
「今、騒がれる訳にはいかない……。『ザ・プレイグス』……!」
自分の分身である“彼”の名前を口にした女が、男達を追い始める。
首のない“彼”――女の傍らに立つ『ザ・プレイグス』は、固く握り締めた拳を振り上げて、男達に襲い掛かった――。
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研究員D

Author:研究員D
「ギリギリ映らない画面端にいるエキストラ研究員」のイメージというのが名前の由来。
基本的に特撮ヲタ。
また、マイナーなものに惹かれる体質。
特撮全般および一部のアニメや漫画(マイナー作品とか古いの)を愛する。

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