FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

第14話「無言メール」

――うわさというのは、見えるけれど見えないものなの。
見方を変えてみて、はじめて分かることもあるわ。

このところ、世間では無言メールのうわさが広まっている。
知らないアドレスからメールが届くのだが、件名にも本文にも何も書かれていないのだ。
それを削除したり、送られてから一週間が経つと、受け取った人間は消えてしまうと言われていた。
ある日、高校生のアキラが学校に行くと、友達のコウジが興奮した様子で話しかけてきた。
「おい、聞いたか?キムラ先生の話」
「なにがだよ」
「最近、キムラ先生の姿を見かけないだろ?なんでも行方不明になってるらしいぜ」
詳しく聞いてみると、キムラ先生は、しばらく前から無断欠勤していたらしい。
電話をかけても一向に出ないので、不審に思った先生の一人がマンションを訪ねてみると、そこには誰もいなかったという。
テーブルには冷めたコーヒーの入ったカップが置かれ、その隣には開いた携帯電話が残されていた。
キムラ先生の実家や、行きそうな場所は全て調べられたが、手がかりは一つも見つけられなかった。
警察では、原因不明の謎の蒸発事件として扱われているとのことだ。
しかも、コウジの話によると、これは今うわさになっている無言メールのせいだというのだ。
「マジだよ、マジ。最近、この学校でも例のメールが回ってるっていうし……」
「やめろよ。お前、そんなの信じてんの?授業始まるぞ」
興味津々といった様子のコウジは、まだ話し足りないようだが、アキラは相手にしなかった。
コウジの横を通り過ぎて、さっさと教室の中に入っていく。

次の日、昨日あれだけはしゃいでいたコウジは、打って変わって暗い表情をしていた。
それが気になったアキラは、コウジに話しかけた。
「どうしたんだよ。らしくないぞ」
「……届いたんだよ、おれの所に」
うつむいたコウジは、視線を自分の携帯電話に向けた。
その手は小刻みにふるえている。
「届いたって、あれか?見せてみろよ」
アキラは、コウジから携帯電話を受け取ると、届いたメールを確認した。
確かに、うわさと同じ何も書かれていない無言メールが受信ボックスの一番上にあった。
「なんでもないよ、こんなの。たちの悪いイタズラに決まってるって」
「そうかな……いや……」
アキラが励ましても、コウジは浮かない顔のままだった。
そうしている内に先生がやってきて、二時間目の授業が始まった。
一時間目の時と同じように、コウジは全くの上の空だ。
アキラから見ても、まともに授業が受けられる状態ではない。
ふと、いい案を思いついたアキラは、学校が終わった後の帰りがけにコウジを呼び止めた。
「一週間後は祝日で休みだし、前日から、おれの家に泊まりにこいよ。それなら安心だろ?目の前で人が消えたりする訳ないんだからさ」
「あ、ああ……分かったよ。ありがとな」
無言メールを送られた人間が消えてしまうという日の前日、予定通りにコウジはアキラの家にやってきた。
二人とも楽しい時間を過ごし、コウジもだいぶ気が紛れているようだった。
そして、一週間後の祝日も終わりを迎えようとしていた。
時間は、もうすぐ日付が変わる午後11時50分だ。
メールのことなど、すっかり忘れてしまっているアキラは、トイレに行くためにコウジを残して席を立った。
戻ってきたアキラは驚いた。
コウジがいなくなっていたのだ。
テーブルの上に、開いて置かれたままの携帯電話を残して……。

あれから数日が経ったが、コウジの消息は依然として不明だった。
こうなった以上、コウジが消えてしまった原因は、あのメールしかない。
最後に会った人間として、アキラは警察に質問されたが、無言メールのことは言わなかった。
きっと、まともには聞いてもらえないだろう。
「コウジ……あいつが消えるなんて……」
コウジがいなくなってから一週間後、放課後の教室に一人だけ残っていたアキラの携帯電話が鳴った。
メールの着信だった。
件名にも本文にも何も書かれていない。
うわさの無言メールがアキラに届いてしまったのだ。
アキラは不安で仕方なかったが、どうすればいいのか分からない。
一日経ち、二日経ち、恐ろしくなったアキラは、携帯電話をクローゼットの奥に放り込んでしまった。
そうして忘れようとしたのだが、一度届いたら逃げることはできない。
最後の日を迎える直前になって、アキラは再び携帯電話を取り出した。
――いやだ!おれは消えたくない!助かる方法……何か助かる方法は……!?
携帯電話を開いたアキラは、手がかりを求めて、あのメールを見直してみた。
にぎった手のひらに汗がにじむ。
その時、メールが表示された画面を穴が開くほど見つめていたアキラの頭の中に、ある考えが浮かんできた。
無言メールという、うわさを知っていたせいで、最初から何も書かれていないと決めつけていたんじゃないか?
だとすれば、そもそも最初の考えが間違いだったということになる。
「そうだ……!」
アキラは、届いた無言メールを自分のパソコン宛てに転送した。
打ち込まれた文字を一見しただけでは読めないようにする、ちょっとした仕掛けがあることを思い出したのだ。
たとえば、赤い背景に赤色で文字を書くと、色が同じために区別が出来ず、ただ見ただけでは何も書いてないように思える。
読めるようにする方法は簡単だ。
その部分をカーソルで選択し、文字の色を反転させてやればいい。
「……!」
アキラがマウスを操作すると、今まで何もないと思っていた場所に文章が浮かんできた。
無言メールの正体は、白い背景に白い文字で書かれたメールだったのだ。
そこには、こう書かれていた。
「このメールは、やみの世界からの招待状です。都合が悪い方は、下記の指定日時までに、このアドレス宛に『お断りします』と返信して下さい」
まだ間に合う。
アキラは、すぐにメールを返信した……。

夜が明け、朝になった。
最後の日は何事もなく終わったのだ。
携帯電話にあったメールは、影も形もなくなっている。
安心したアキラは、深いため息をついて、ベッドに寝転がった。
昨夜は心配で寝るどころではなかったので、緊張が解けたのもあって、すぐに心地よい眠気がおそってきた――。
だから、アキラは気付いていなかった。
パソコンに転送してあったメールが、アキラの所から、見知らぬどこかに送信されていることに……。
今まで携帯電話の間だけで回っていたメールが、パソコンのメールの中にも入り込んでしまったのだ。
うわさは、どこまでも広がっていくだろう……。

……どうしてわたしがそんなことを知っているかって?
それは、わたしがうわさの花子だからよ――。

[完]
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

研究員D

Author:研究員D
「ギリギリ映らない画面端にいるエキストラ研究員」のイメージというのが名前の由来。
基本的に特撮ヲタ。
また、マイナーなものに惹かれる体質。
特撮全般および一部のアニメや漫画(マイナー作品とか古いの)を愛する。

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
現在時刻
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。