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第4話「うわさの花子さんのウワサ」

……今から少し昔のお話です。
ケンジやリサたちのお父さんやお母さんが、まだ小さかった頃、学校で一つのうわさが話されていました。
真夜中の十二時に、鏡に向かって、「花子さん、花子さん、どうか姿を見せて下さい」とお願いをするのです。
すると、花子さんが来てくれて、困っている人を助けてくれるというウワサでした……。

3年生のマサシ君たちの学校では、このところ、続けて奇妙な事件が起こっている。
放課後の校舎に残っている生徒が、次々にいなくなってしまうのだという。
警察も調査をしたが、はっきりした手がかりはなく、原因は分からなかった。
連続して起こる失踪事件を、学校側でも放ってはおけない。
それで、しばらくの間は、授業が終わったら、すぐに生徒を帰らせることになった。
ある日の下校途中で、仲良しのマサシ、ユウスケ、ヒトミの三人が、事件のことについて話していた。
「ねぇねぇ、花子さんを呼んで助けてもらおうよ」
ヒトミが言った花子さんとは、近頃学校で評判のオバケのうわさだ。
ただ、見たという友達が周りにいないので、マサシはあまり信じていなかった。
「どうやって呼び出すんだよ」
「真夜中の十二時に、鏡に向かって、花子さんにお願いすればいいんだって」
「でも、本当に来てくれるのかなあ」
「だめでもいいから、今日、僕の家に集まって、みんなでやってみようよ」
マサシは半信半疑だったが、ユウスケの提案で、今夜、花子さんを呼んでみることになった。

三人の家は近所にあり、お互いに遊びに行っていたので、場所はよく分かっている。
夜になり、家を抜け出したマサシとヒトミが、ユウスケの部屋にやって来た。
ヒトミが持ってきた鏡を机の上に置くと、三人は揃ってお願いを始めた。
「花子さん、花子さん、どうか姿を見せて下さい……。僕たちの学校を助けて下さい……」
けれど、いくら待っても花子さんは現れない。ユウスケとヒトミは、がっかりしたが、マサシが励ますように言った。
「だったら、明日の放課後に残って、僕たちで確かめようよ」
ヒトミとユウスケも賛成し、次の日の放課後、三人は教室に隠れて、見回りの先生をやり過ごした。
先生がいなくなった後、教室を出た三人は、廊下を通り、階段を二回上って三階に向かう。
消えてしまった生徒のランドセルが、三階の廊下のつきあたりに残されていたからだ。
古い木造の校舎は、歩くと床がきしんで、ぎしぎしと鳴る。
生徒がみんな帰ってしまった夕方の校内では、その音がよく響き、いつも通っている学校も、なんとなく不気味に感じられる。
「あれ?あそこにいるの、サオリじゃない?」
ヒトミが言った方向に誰かいる。
見ると、例の廊下のつきあたりに、クラスメートのサオリが立っていた。
こちらに背中を向けているので、顔までははっきり分からないが、確かにサオリのようだ。
「サオリ、忘れものしたの?」
ユウスケが声をかけたが、その言葉が聞こえていないかのように、サオリは、つきあたりの壁に向かって歩いていく。
聞こえなかったのかなと思い、ユウスケは近付いて、サオリの肩を叩いた。
「ひゃっ」
途端に、ユウスケは驚いて手を離してしまった。
サオリの体が、氷のように冷たく、体温が感じられなかったからだ。
そして、そのままサオリは歩き続け、吸い込まれるようにして、壁の中に消えてしまった。
あっけにとられたように、三人は、しばらく動くことが出来なかった。
「うそ……サオリが消えちゃった!?」
「どうしよう……。とにかく先生を呼んでこなくちゃ……」

ちょうどその時、階段を上ってくる足音が聞こえた。
三人はどきりとしたが、それが担任のシマダ先生だったので、ひとまず安心した。
「あなたたち、まだ残っていたの?早く帰りなさいね」
「先生、大変なんです。サオリが……サオリが、そこで消えちゃったんです!」
マサシたちは、こっそり残っていたことも忘れて、さっき見たことを、大慌てで先生に伝えた。
先生は、とても信じられない様子だったが、マサシたちの話を聞き終わり、やがて言った。
「あなたたちがウソを言っているとは思えないけど、ちょっと信じられないわ。サオリさんなら、もう帰ってるはずだけど……」
「本当なんです、先生。それに、ユウスケがサオリの肩に触ったら、すごく冷たくて……」
「そこまで言うんだったら、サオリさんの家に電話して確認してみる?」
先生と一緒に職員室に行ったマサシたちは、電話を借りて、サオリの家にかけてみた。
しばらく待っていると、サオリ本人が電話口に現れた。
「もしもし、サオリ?家に帰ってたの?」
「え?マサシ?……うん、早く帰れって言われてるから、学校が終わったら、すぐに帰ったけど……」
「そのあと、学校に戻ってきてない?」
「今日は、帰ってからずっと家にいるよ。もしかして何かあったの?」
「う、ううん。別に何でもないんだよ」
電話を切ったマサシの肩を、シマダ先生が叩いた。
「心配しなくても大丈夫よ。さ、サオリさんは家にいたんだし、あなたたちも早く帰りなさいよ」
仕方なく三人は職員室を出たのだが、なんだかマサシの様子がおかしい。
真っ青な顔をして、小さく震えている。
ヒトミがそばに来て、心配そうに、マサシの顔をのぞきこんだ。
「どうしたの、マサシ?お腹痛いの?」
「ユウスケ……サオリの体が、すごく冷たかったって言ったよな」
「そうだけど……」
「さっき、先生に肩を叩かれた時、先生の手……すごく冷たかった……」
その時、職員室の扉が開いて、帰り支度をしたシマダ先生がやって来た。
「みんな、もう外は暗いから、一緒に帰りましょう」
先生は言ったが、さっきまで話をしていた三人は、その場に固まってしまったように、黙ったまま先生の顔を見つめている。

「どうしたの……?」
「きゃーっ!!」
「う、うわあああ!!」
途端に、マサシたち三人は、悲鳴を上げて正面玄関に向かって走り出した。
さっきまでシマダ先生だったはずの顔が、ドロドロと溶け始めていたのだ!
玄関までたどり着いたが、鍵がかかっているのか、扉はびくとも動かない。
後ろからはシマダ先生の足音が聞こえてくる。
閉じ込められてしまった三人は、その場から逃げるために、急いで階段を駆け上がった。
三階までやって来たのだが、後ろからだけでなく、前からも、誰かが近付いてくる音がする。
驚いた三人は、思わず立ち止まってしまった。
よく見てみると、薄暗い廊下のつきあたりから、何人もの人が、こちらに向かって歩いてくる。
どの人も、いなくなってしまった生徒と同じ顔をしている。
怖さのあまり、マサシたちは、腰が抜けて立てなくなってしまった。
前からは何人もの人が、後ろからはシマダ先生が、どんどん近付いてきている。
「助けて……花子さん、助けて!!」
花子さんを呼んだことを思い出した三人は、大きな声で叫んでいた。
すると、いつの間に現れたのか、暗い廊下の真ん中、三人のすぐそばに、小さな女の子が立っていた。
おかっぱ頭で、チューリップのアップリケが縫いつけられたスカートをはいている。
女の子の腕の中には、毛玉のような不思議な生き物が抱き抱えられていた。
その生き物は、女の子の腕から飛び降りると、ぴょんぴょんと、マサシたちの周りを飛び跳ねている。
「もう大丈夫よ」
女の子は、しゃがみこんでいる三人を安心させるように言うと、次々に人が出てきている廊下のつきあたりに、鋭い視線を向けた。
「どうして、こんなことをするの?」
女の子の言葉にも耳を貸さず、前後からは、たくさんの足音が迫ってくる。
「しょうがないわね……」
女の子は、アップリケをひきはがすと、薄暗い廊下のつきあたりめがけて投げつけた。
「呪符アップリケ!やみの世界に帰りなさい!」
壁に呪符アップリケがはりつくと、今まで聞こえていた足音や、床のきしむ音が聞こえなくなり、静かになった。
「あ、あなたは……?」
目に涙を浮かべたヒトミが言った。
「わたしは花子……。これからは、もうこんなことは起こらないから、安心してね……」
花子さんは、ズックぐつをペタペタと鳴らして、やみの中へ去っていった。
「あ、ありがとう、花子さん」
三人は、花子さんにお礼を言った。

それから、この学校で生徒がいなくなる事件はなくなり、四年後には、マサシ君、ユウスケ君、ヒトミちゃんの三人も、無事に卒業していきました……。
また時間は流れ、大人になったマサシ君は、小学校のオオタニ先生になりました。
オオタニ先生が職員室を出て教室に向かうと、登校してきた生徒たちが、元気にあいさつをします。
その頃、先生が担任している4年2組の教室では、サトシ君と、きょう子ちゃんが何か話をしていました……。

「会ってみたいから、いっしょに連れてってよ」
「え、えっ、ど、どこへ?」
「もちろん、花子さんの電話ボックス!」

[完]
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プロフィール

研究員D

Author:研究員D
「ギリギリ映らない画面端にいるエキストラ研究員」のイメージというのが名前の由来。
基本的に特撮ヲタ。
また、マイナーなものに惹かれる体質。
特撮全般および一部のアニメや漫画(マイナー作品とか古いの)を愛する。

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