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第3話「よみさんのウワサ」

よみさんのうわさを知っていますか?
うわさがあっても、実際によみさんを見たという人は、あまりいません。
何故なら、よみさんに出会ってしまうと、黄泉の国に連れていかれてしまうと言われているからです……。

授業のチャイムが鳴って、生徒たちは下校を始めた。
シズカとハルカは同じクラスで、幼稚園からの大の仲良し。
「ねぇねぇ、シズカちゃん。よみさんのうわさって知ってる?」
「誰、それ?花子さんのうわさなら知ってるけど……」
ハルカがシズカに聞いたのは、最近、二人が通う学校で話されているうわさのことだ。
うわさといっても、そんなに有名ではないようで、ハルカも数日前に初めて知ったのだった。
「私もよく知らないんだけど、とにかく、めったに出てこないんだって。だから、見たことがある人は、ほとんどいないの」
「そうなんだ。じゃあ、もし会えたら、何かラッキーなことがあったりして!」
「うーん、そうでもないかも……。よみさんって、夕方に家に帰る子供を、どこかへ連れていっちゃうらしいよ」
「もう、変なこと言わないでよ。なんだか怖くなっちゃうじゃない……」
二人とも少し怖くなってしまったので、その後は、いつも通りの話をしながら歩いていった。
クラスの男の子のことや、最近になって遺作が見つかったシンガーソングライターの話などをしていると、シズカの家の前に着いた。
「じゃあ、また明日ね」
「うん、バイバイ!」
帰っていくハルカの背中を見送って、シズカは家の中に入った。

ところが、次の日に学校に行くと、ハルカの姿がない。
担任の先生によると、昨日から家に帰っていないらしい。
先生は、最後にハルカと会っていたシズカに話を聞いてみたが、ハルカが何処に行ったのかは全く分からなかった。
「まさか……ハルカちゃんは、よみさんに連れて行かれてしまったのかも……」
シズカは不安に思ったが、先生に話しても、とても信じてくれそうにない。
仕方なく、その日は、そのまま家に帰ることにした。
いつもは二人で通っている道を、一人で歩くというのは、やっぱり寂しい。
昨日ハルカと話した、よみさんのうわさのこともあり、なんだか背筋が寒くなってくる気がする。
早く帰ろうと、自然と早足になるシズカの後を、もう一つの足音が追いかけてくる。
シズカが立ち止まると、足音も同じように、その場で止まった。
恐る恐る振り返ってみると、少し離れたところにある電柱の影に、一人の女の子が立っている。
青色の長いスカートをはいていて、おかっぱ頭にピンクのリボンを着けている女の子だ。
その女の子は、シズカの方を見ているらしい。
「あぁ、よかった。あの子だったんだ……。でも、わたしに何か用があるのかなぁ……」
シズカが歩き出すと、足音もまたついて来た。
てっきり、あの女の子だと思ったシズカだが、もう一度、後ろを見てみると、さっきまでいたはずの女の子の姿が消えている。
電柱のそばにも、誰かがいる様子はなかった。
そこは広い道なので、そこ以外に隠れる所はどこにもないのだ。
「えっ!?そんな……」
急に怖さが高まってきたシズカは、とうとう家まで走り出した。
すると、足音も早くなり、シズカの後ろから、いつまでも追いかけてくる。
「やだ、ついて来ないで!」
きっと、あの子は、うわさのよみさんに違いない。
ハルカちゃんは、昨日よみさんに連れていかれてしまったんだ。
もし捕まったら、次は自分が連れていかれてしまう!
ようやく家までたどり着いたシズカは、扉を開けて玄関に飛び込んだ。
息を切らせながら扉を閉めて、急いで鍵をかける。
そこまでやってから、シズカは玄関に腰を下ろし、足音が追ってきていないか、じっと耳をすました。
外からは、特に目立つ物音は聞こえてこない。
どうやら、うまく逃げることが出来たようだ。

「はぁー……怖かったぁ……。お母さん、いないの?」
立ち上がったシズカは、家の奥に呼びかけながら、キッチンに向かった。
いつもなら、夕方のこの時間は、お母さんが晩ご飯の準備をしているはずなのだ。
ところが、今日は買い物にでも行っているのか、誰もいない。
キッチンを出たシズカは、二階にある自分の部屋に行くため、階段を上り始めた。
ふと、一階の廊下を見下ろすと、何か黒い跡のようなものが、いくつもついている。
それが何か分かった瞬間、シズカの顔から血の気が引いていった。
廊下とキッチンの間に、たくさんの真っ黒い足跡が、まるでシズカの後を追うようについてきていたのだ!
「いやーっ!!」
シズカは勢いよく階段を駆け上がり、自分の部屋に入ると、そのドアにも鍵をかけた。
恐ろしさで震えながら、シズカが息を殺していると、ドアの向こうから、ひたひたという足音が聞こえてきた。
耐えられなくなったシズカは、ランドセルを放り出し、ベッドに入って布団を頭からかぶる。
やがて足音が止み、それに代わってドアをノックする音が聞こえた。
無視したのだが、ノックの音がしなくなったかと思うと、今度はガチャガチャと激しくドアノブを回す音が続く。
そして最後には、ぎぃという音と共にドアが開き、足音が一歩ずつ、シズカの方に近付いてきた。
「足……足を下さい……」
布団をかぶっていても消えない不気味な声と気配が、だんだんと近くなってくる。
その時、いつの間にか開いていた窓から、さぁっとおだやかな風が吹き込んできた。
「お待ちなさい」
カーテンが揺れ、聞き覚えの無い高い女の子の声が、風に乗って部屋の中を流れた。
おそるおそるシズカが布団から顔を出すと、青い服を着た女の子が、シズカに背を向けて立っていた。
帰る途中に、電柱のそばで見かけた女の子だ。
手には、青い花の飾りがついたリボンを持っている。
女の子の前には、長い髪の、足がない女の人がいて、恨めしそうな目で女の子を睨んでいた。
「この方は、私の大事なお客様ですの。手を出さないでいただけますか?」
「足が欲しい……足が欲しい……」
女の子は優しく言ったが、不気味な女の人は聞く気がないのか、なおもシズカの方に手を伸ばそうとする。
「聞いてもらえないなら、こうですわ!えぇーい!」
女の子が、持っていたリボンを女の人に投げつけた。
リボンは、ひらりと踊るように空中を飛んで、女の人の体に巻きついていく。
「ああぁぁぁ……」
女の人は悲しそうな叫びをあげ、姿が徐々に薄れて消えてしまった。
残っていた足跡も、最初からなかったかのように、あとかたもなくなっている。
巻きついていたリボンは、床の上にはらりと落ちた後、風で飛ばされたようにひるがえって、また女の子の手に戻った。

「だ……誰なの?」
「私は、よみと申します。あなたとお話がしたかったので、こうしてやって来たんですの」
「え……よみさん……!?」
「あなたのお友達も、いらっしゃったんですのよ。さぁ、一緒に行きましょう」
よみさんは、シズカに向かって手を差し出してきた。
よみさんが、自分を助けてくれたことは分かったが、ついていくのは怖い気がした。
それに、友達が来たということは、ハルカちゃんを連れていったのは、やっぱりよみさんなのだ。
シズカは首を振って、ゆっくりと後ろに下がった。
しかし、ベッドの上にいるので、すぐに背中が壁につかえてしまう。
「さぁ……」
「よみさん!」
よみさんが言った時、別の女の子の声が響いた。
窓のそばに、小さな女の子が立っている。
赤色の短いスカートをはいた、おかっぱ頭の女の子だ。
「よみさん、その子は嫌がってるでしょう。無理やりに連れていくなんて、だめよ。……それにハルカちゃんも家に帰してあげて」
「あら、花子さん。……仕方ないですわね。今日はあきらめますわ」
よみさんがシズカから離れると、窓の外から風が吹いてきた。
強い風にシズカが目をそらした間に、よみさんはいなくなっていた。
「もう大丈夫よ。よみさんは、悪い人じゃないんだけど……。いまごろハルカちゃんも家に帰っていると思うわ」
「あなたは?」
「私は花子よ。夕方の帰り道には、気をつけてね」
そう言うと、花子さんは微笑んで消えていった。

……次の日になって、ハルカちゃんも元気に登校してきました。
シズカちゃんは心配していましたが、当のハルカちゃんは、めずらしい体験ができたと喜んでいたので、シズカちゃんは少し呆れてしまいました。
けれど、ハルカちゃんとシズカちゃんは、またいつものように、一緒に帰ることができるようになったのです。
それを見つめて、くすりと笑うと、よみさんは、夕日の中に消えていきました……。

[完]
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プロフィール

研究員D

Author:研究員D
「ギリギリ映らない画面端にいるエキストラ研究員」のイメージというのが名前の由来。
基本的に特撮ヲタ。
また、マイナーなものに惹かれる体質。
特撮全般および一部のアニメや漫画(マイナー作品とか古いの)を愛する。

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