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第2話「やみ子さんとごわごわ」

薄暗い部屋の中に月明かりが差し込んでいる。
壁の大きな棚や、中央のテーブルの上には、色々な気味の悪いものが置かれていた。
その中にあるドクロを手に取ると、やみ子さんは窓を開け放った。
「今日は満月……。月の光が一番強くなる日だわ」
やみ子さんが、ドクロを掲げて呪文を唱える。
鈍く光るドクロは月の光を十分に吸い込み、新しいドクロのペンダントが完成した。
「これで、また強力なペンダントが出来たわ。花子になんか……負けないわよ」
その時、やみ子さんは、後ろの方から何かの気配を感じた。
「誰だっ!」
たった今出来上がったばかりのドクロのペンダントを構えて、やみ子さんが振り返った。
視線の先にいたのは赤い毛玉のような生き物だ。
テーブルの上に置いてあったトカゲの尻尾を食べていたらしい。
「ごわごわ……」
「なんだ。なにかと思えば、ごわごわか」
ごわごわというのは、最初は小さいですが、ものを食べる度に、どんどん大きくなっていく妖怪のことです。
そればかりか、自分の側にいる人間のエネルギーも食べてしまい、最後には動けなくなった人間を食べてしまうのです。
姿はホワホワちゃんに似ていても、本当はとても恐ろしい妖怪なのです。
でも、小さいうちなら、そんなに手強い相手ではありません。
「ちっ、さっさとやっつけてやるよ!」
「ごわごわ!?」
やみ子さんがペンダントを投げつけようとすると、ごわごわは慌てて、開いた窓から逃げていった。
「……まぁ、いいさ。あんな弱いヤツに用はないよ」
やみ子さんは、そう言って窓を閉めた。

ところが、月光を浴びたトカゲの尻尾の味が忘れられないのか、次の日の夜も、また次の日も、ごわごわはやって来ました。
妖怪たちは、物陰や夜の闇や、暗い所が大好きです。
ドクロのペンダントが作られるこの家は、もしかしたら妖怪たちにとっても住みやすい場所なのかもしれません。
「またこいつ?……そんなに、ここが気に入ったのか?」
やみ子さんも最初はやっつけようとしたが、あんまりしつこいので、一日に一回だけ食べ物をあげるようになった。
食べ物をもらえるようになったことで、ごわごわは、やみ子さんの家にいるようになった。
やみ子さんは、いつも一人きりで、花子さんのような家族はいない。
だから、やみ子さんも、ごわごわと一緒にいる時には、なんだか寂しさが紛れるような気がしはじめていた。
でも、それは長く続かなかった。
ある日突然、ごわごわが、やみ子さんの家からいなくなってしまったのだ。
「しまった……!食べ物が欲しくて人間の世界に行ったのか?」
ごわごわが大きくならないように、やみ子さんは、あまりたくさんの食べ物はあげていなかった。
だから、お腹を空かせてしまったのだろう。
前に、人間の女の子が、ごわごわを可愛がるあまりに、多くの食べ物をあげてエネルギーを吸われ、すっかりやつれてしまったことがありました。
その子に限らず、食べ物を欲しがるごわごわが、人間の世界に行くことはよくあるのです。
小さい間は可愛らしい姿をしているため、人は、ついつい食べ物をあげたくなってしまうからです。
あの時は、食べられてしまう寸前で花子さんが来てくれたために助かったそうだが、今回は自分の責任だと、やみ子さんは思った。
ごわごわが自分の所に来た時にやっつけていれば、こんなことにはならなかった。
だから、なんとしても自分が探し出さなければならない。
「もし、ごわごわが人間の世界に行ってしまったなら、花子より先に見つけないと……」
ドクロのペンダントを首にかけると、やみ子さんは人間の世界に降りるために、急ぎ消えていきました……。

「か、かわいい……」
四年生のカオリは、家の庭で赤い毛玉のような不思議な生き物を見つけた。
最初は、ぬいぐるみが落ちているのかと思ったが、その生き物は、庭に生えている草を食べているようだ。
うずくまっていたその生き物は、カオリに気付くと、振り向いて、にっこりと笑った。
「ごわごわ……」
「ごわごわ……あなた、ごわごわっていうの?あたしはカオリっていうの。よろしくね!」
カオリも、つられたように一緒に笑った。
「そうだ。お腹減ってるんだね。今、何か持ってくるから!」
台所から戻ってきたカオリは、自分のおやつのショートケーキが乗った皿を差し出した。
すると、ごわごわは、あっという間にケーキを平らげてしまった。
「よっぽど、お腹が空いてたんだね……。そうだ!これから、ずっといていいよ。どうせ一人でいてもつまんないし……」
カオリは、ひとりっ子だった。
お父さんもお母さんも働いているので、家に帰っても、いつもひとりぼっちだった。
でも、ごわごわがいれば、ひとりぼっちじゃない。
カオリは嬉しくなって、また笑った。
その様子を、やみ子さんは遠くから見守っていた。
一度ペンダントにかけた手を下ろし、やみ子さんの姿は、闇の中に消えていった。

ある日の夕方、花子さんは、ホワホワちゃんと一緒に町を歩いていた。
すると、一軒の家の前に、やみ子さんが立っている。
「あ、やみ子さんだ。なにしてるんだろうね」
ホワホワちゃんが花子さんに話しかけた時、家の窓から、赤い毛玉のようなものが見えた。
「あれは……まさか、ごわごわ?いけない、かなり大きくなってるわ」
花子さんは、ごわごわをやみの世界に帰すために、アップリケを手にして、やみ子さんの所に近付いた。
「なによ、邪魔しにきたの?」
やみ子さんは、花子さんとホワホワちゃんを見ると、二人をにらみつけた。
「でも、ごわごわがいるんだよ。今のうちになんとかしないと……」
「うるさいね。あれは、わたしがやっつけるんだよ!余計なことをしたら承知しないよ!」
二人の前に立ちふさがるようにして、やみ子さんは、そう言った。
花子さんに向けて、ドクロのペンダントまで構えているところから、やみ子さんの気持ちが強いのが分かった。
「しかたないわ。行きましょう、ホワホワちゃん」
「えっ、でも……」
「ここは、やみ子さんに任せましょう。やみ子さんに考えがあるみたいだから」
花子さんはアップリケを元通りしまうと、ホワホワちゃんと一緒に、どこかへ去っていった。
あとに残ったやみ子さんは、ペンダントを首にかけて、家の窓からカオリとごわごわを見た。
カオリは、少し元気がなさそうだが、ごわごわといられることで寂しさが消えて、嬉しそうな笑顔をみせている。
それを確認してから、やみ子さんの姿は、夕日の中に消えていった。

ごわごわは、カオリが驚くほど、よく食べた。
日が経つにつれて、ごわごわは大きくなり、反対にカオリの体は、だんだんとやせほそっていく。
お医者さんに診てもらっても原因は分からないと言われ、お父さんとお母さんの不安は募るばかりだ。
そのうちに、カオリはベッドから起き上がれないくらいに、やせほそってしまった。
お父さんとお母さんは心配していたが、そのせいで、二人と一緒にいられる時間が増えたので、カオリは少し嬉しかった。
それに、ごわごわもいてくれるから、寂しいという気持ちは、もう感じなかった。
心配するお父さんとお母さんと、すっかりやつれてしまったカオリの様子を、やみ子さんは、ずっと見守っていた。
そして、決心したかのように、ドクロのペンダントを握りしめて、姿を消した。
ある日の真夜中、眠っているカオリのまくら元に、ごわごわがやってきて、したなめずりをした。
大きく口を開けたごわごわが、カオリを食べようとした時、女の子の声が響いた。
「待ちな!」
やみ子さんは、ごわごわの前に立ちはだかると、ドクロのペンダントを構える。
それを見たごわごわは、勝てないと思ったのか、素早く逃げ出した。
「逃がさないよ!」
街灯の明かりが届かない薄暗い道に、月明かりが差し込んでいる。
そこまでやって来たごわごわだったが、やみ子さんが前から現れて、道をふさいだ。
「……お前の逃げていく場所は分かってるんだ」
やみ子さんの手から放たれたペンダントが、ごわごわに命中した。
ごわごわは悲鳴をあげながら、ドクロのペンダントに吸い込まれていく。
すると、ごわごわの体から、白いガスのようなものが出てきて、すーっとカオリの体の中に入っていった。
とたんに、カオリの体は元通りになった。
「ごわごわは、生きているもののエネルギーを食べてしまう……。だから、一緒にはいられないのさ」
そう言って、やみ子さんは去っていきました……。

カオリは夢を見ていた。
この頃は、一日中ベッドの中で過ごすようになっていたが、夢を見るのは久しぶりだった。
ふわふわと、心地よい眠りの中を漂っていると、目の前に毛玉のようなものが現れた。
それは、小さいころのごわごわに似ていたが、影になっていて、色までは、はっきりと分からない。
ごわごわを友達だと思っているカオリは、思わず呼んだ。
「ごわごわなの?」
「そうだよ、カオリちゃん。お別れするのが残念だけど、もう行かなくちゃいけないんだよ。でも、どうしても最後に伝えたいことがあって、夢の中に入ったんだ」
カオリは、ごわごわが初めてしゃべったことに驚いたが、影に向かって尋ねる。
「ごわごわ、どこかに行っちゃうの?やだよ。行かないで……。ずっとここにいてよ」
またひとりぼっちになってしまうことが怖くて、カオリの目から涙が流れた。
「ごめんね……。それはできないんだ。カオリちゃん、一緒にいられて楽しかったよ。ありがとう。……でも、ぼくがいなくなっても君は一人じゃないよ」
「うぅ……ひっく……行かないで……行かないで……ご飯いっぱいあげるから……」
毛玉の影が近寄ってきて、その尻尾で、優しくカオリの涙を拭いてあげた。
それでも、涙の粒は、あとからあとから、次々にあふれてきてしまう。
「お父さんもお母さんも、カオリちゃんのことが大好きなんだ。たとえ一緒にいられない時があっても、いつだってカオリちゃんのことを一番に考えてるんだよ。そのことを、分かって欲しかったんだ」
慰めるように、毛玉の影は続けて言った。
そこで、カオリは、自分の体調が悪くなってから、お父さんとお母さんが、とても心配してくれたことを思い出した。
お父さんは会社を休んで一緒にいてくれたし、お母さんもカオリが眠るまで側にいてくれた。
それは、二人が、カオリのことを大事に思ってくれていることの証拠だった。
カオリが、そのことに気がついた時、なんだか心の中が暖かくなるような感じがした。
「さよなら、カオリちゃん。元気になってね。ぼくも、そうなって欲しいと思うから……」
目がさめたカオリは、ゆっくりと目を開けて、ベッドの上で体を起こした。
昨日までの姿が、うそのように、すっかり元気がもどっていた。
開かれたカーテンの間から、少しまぶしいくらいに、朝の光が差し込んでくる……。

昨日のことは、ただの夢だったのでしょうか?
カオリちゃんは、また元気に遊び始め、今度の日曜日に遊園地につれていってもらう約束をしました。
そして、花子さんとホワホワちゃんは、またどこかで、だれかを助けてくれるかもしれないのです……。

[完]
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プロフィール

研究員D

Author:研究員D
「ギリギリ映らない画面端にいるエキストラ研究員」のイメージというのが名前の由来。
基本的に特撮ヲタ。
また、マイナーなものに惹かれる体質。
特撮全般および一部のアニメや漫画(マイナー作品とか古いの)を愛する。

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