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第1話「消えた電話ボックス」

うわさとおばけは、よく似ています。
どちらも時間とともに形が変わっていくものだからです。
そして、うわさの花子さんのウワサも、形は一つではありません……。

四年生のケンジの町も、最近は発展が著しい。
ある日の食卓で、ケンジは、役場に勤めているお父さんから話を聞いた。
なんでも、長らく郊外にあったスクラップ置き場が、丸ごと撤去されるそうだ。
元々あの場所は、権利の関係で揉めていて、今までほったらかしにされていたのだが、ようやく話にめどが付いたらしい。
そこで、これから更に発展する町の美化推進と、新たな建物が造られる準備を兼ねて、完全に片付けられることになったのだ。
「置いてあるものは全部なくなっちゃうの?」
ケンジが、お父さんに聞いた。
「小さい子供が入って、怪我でもしたら危ないからね」
スクラップ置き場には、積み上げられた古い自動車やタイヤの山、古びた電話ボックスなどがある。
そのため、時々子供が入り込んで遊んでいることがあった。
「大変だ。電話ボックスがなくなったら、花子さんを呼べなくなっちゃう」

ケンジは学校に行くと、隣の席のリサに、昨日聞いた話をした。
「あたしのパパも、来週の月曜日から撤去するんだって言ってた」
「何とかしなくちゃ……。でも、どうしよう?」
「あたし、パパに頼んでみる!せめて電話ボックスだけで残してって」
学校から帰ったリサは、晩御飯の時にパパにお願いしてみることにした。
リサのママは、リサが小さい時に交通事故で亡くなってしまった。
いつも、パパと二人でご飯を食べるのが、リサの家の日課になっている。
「うーん、それはダメだよ。大体、捨ててあるんなら、その電話ボックスだって壊れてるんじゃないか」
「お願いパパ!あの電話ボックスは花子さんの電話ボックスなの。
あれがないと、花子さんに助けてもらえなくなっちゃうの!」
「そう言われてもなあ。パパには決められないんだよ」
「そんなぁ……」
そして、撤去作業の日を迎えた。
作業員の中には、リサのパパの姿もあった。
作業は順調に終わったが、その夜から、作業員の人達が高熱を出したり、突然倒れたりすることが次々に起こった。
リサのパパの同僚の人が何人も倒れていく内に、リサのパパも段々不安になってきた。
その様子を見ていたリサは、パパを助けたい一心で、花子さんへの手紙を書いた。
とっておきのチューリップの便箋に手紙を入れたのだが、どこに送ればいいのか分からない。
リサは花子さんにお願いをしてから、机の上に手紙を置いておくことにした。

その夜、トイレに起きたリサは、眠っているパパがうなされていることに気付いた。
「きゃーっ!」
なんとパパの枕元で、不気味な白い人影が揺れていたのだ。
「苦しめ……。お前も苦しめ……!!」
人影はリサに気が付くと、左右に揺れながらリサの方に向かってきた。
「やだ……助けて……花子さん、助けて!」
「やめなさい!」
人影がリサに襲いかかろうとした時、凛とした女の子の声が響いた。
その声を聞いた人影は一度姿を消し、今度は庭の方に現れた。
「邪魔するな……。哀れな私の邪魔をするのは誰だ……」
闇の中で淡い光が輝き、そこに、頭をおかっぱにして、アップリケのついた短いスカートをはいた女の子が立っていた。
女の子の側には、ふわふわした毛玉のような不思議なものが浮いている。
「ここはあなたが来る所じゃないわ。こんなことは止めて、やみの世界に帰りなさい」
「うるさい!今までお前に封じられていた恨みを晴らしてやる!」
「分からずやっ!幽霊しばりアップリケ!えーいっ!」
「ふん!なんだ、こんなもの!」
なんということでしょう。
花子さんのアップリケが簡単にはじかれてしまったのです。
これはかなり悪い幽霊に違いありません。
その時です。
何かが凄いスピードで飛んできたかと思うと、幽霊めがけてぶつかっていきました。
矢のように飛ぶそれは、不気味なドクロのペンダントです。
「やみ子さん!」
花子さんが振り返った。
暗闇の中で、一筋の月明かりに照らされて、女の子の姿が浮かび上がる。
やみ子さんです。
花子さんの永遠のライバル、やみ子さんが現れたのです。
「強い力を感じて来てみれば……。何をやっているの。そんなやつにやっつけられたら承知しないよ!」
「でも手強いんだよ、やみ子さん……。お願い、手伝って!」
ホワホワちゃんが、やみ子さんに言いました。
さっきの毛玉のようなものは、花子さんのパートナーのホワホワちゃんだったのです。
「仕方ないね。じゃあさっさと退治するよ!」
「ええ、分かったわ」
幽霊は、さっきのやみ子さんの一撃で怯んでいる。
この隙に、花子さんとやみ子さんはアップリケとペンダントを構えて、同時に投げ放った。
「ぎゃあぁぁぁぁ!」
アップリケとペンダントが命中すると、幽霊は絶叫をあげて、やみの中に消えていった。
それが聞こえなくなると、辺りは元通り静かになった。

「ふん……」
ドクロのペンダントを掴むと、やみ子さんも、やみの世界へと帰っていった。
先程から一部始終を見守っていたリサが、花子さんに声をかける。
「あの……あなた、もしかして花子さんですか?」
「そうよ。リサちゃんが手紙を書いてくれたから、ここに来たの」
花子さんは、優しく微笑んで答えた。
「ありがとう、花子さん!
でも……電話ボックスがなくなっちゃったから、もう花子さんには会えないんだよね……?」
「そんなことはないわ。みんなが私を、ウワサを信じてくれる限り、私はいるのよ。私は電話ボックスの花子じゃなくて、ウワサの花子なんだから」
もう一度微笑んで、花子さんは去っていきました……。
「ありがとう、花子さん」リサは改めて花子さんにお礼を言った。

色んなものが捨てられていたあの場所は、よくない気が集まりやすい場所だったのです。
今までは、花子さんが電話ボックスを連絡場所にすることで、悪い霊が生まれてしまわないように封じていたのです。
電話ボックスもスクラップ置き場と一緒になくなってしまいましたが、これでよかったのかもしれません。
なぜなら、綺麗に片付けられて、ここに悪い霊が生まれることは、もうなくなったからです。
その後、倒れた人達も元通りになり、リサのパパも元気になりました。
そして、花子さんへの手紙を書いて置いておくと、花子さんが助けてくれるという新しいウワサが出来たのでした……。

[完]
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プロフィール

研究員D

Author:研究員D
「ギリギリ映らない画面端にいるエキストラ研究員」のイメージというのが名前の由来。
基本的に特撮ヲタ。
また、マイナーなものに惹かれる体質。
特撮全般および一部のアニメや漫画(マイナー作品とか古いの)を愛する。

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