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第13話「夜更かしの悪魔」

真夜中の午前二時。
五年生のタイチは、部屋でテレビゲームをしていた。
ゲームオーバーになって、ふと時計を見ると、もうかなり遅い時間であることに気付いた。
「もう、こんな時間かあ。まだゲームしたいのに……」
仕方なく、ゲーム機とテレビの電源を消す。
暗くなった画面に、部屋の中の様子とタイチの顔が映り
込んでいる。
その画面を見ながら、タイチは呟いた。
「あーあ、時間が経つのって早いよな。夜のままなら、学校に行かなくてもいいし、ずっと遊んでいられるのに」
タイチは、ぼやきながら、部屋の電気を消してベッドに入り込んだ。
タイチが眠りはじめた頃、暗い画面の中で何かが動いた……。
「タイチくん」
夢の中で、誰かがタイチの名前を呼んだ。
「え、誰?」
タイチが振り返ると、そこには黒いコートを着た背の高い男の人が立っていた。
知らない人だ。
コートと同じ色の帽子を深くかぶっており、顔は見えない。
「君は夜のままの世界に行ってみたいと思ったことはないかな?そこでは、好きなだけ遊んでいてもいいんだ」
「そんな場所があるの?だったら、行ってみたいよ」
「では、迎えにこよう。それでは、また後で……」
タイチが答えると、男の人の姿と声が、だんだんと薄れていった……。

「――タイチ……タイチってば……」
身体が軽く動かされる感覚と声で、タイチは目を覚ました。
ここは教室で、友達のハヤトが、タイチの肩を揺さぶっていたのだ。
担任の先生が黒板の前に立って、数字や記号を書きつけている。
今は算数の時間らしい。
「……ああ、授業中だったんだ」
まだ、ぼんやりしている頭で、タイチは考えた。
ゆうべは遅くまでゲームをしていたせいか、授業中に居眠りをしていたんだろうか。
でも、さっきの夢は……。
なんだか真夜中にも同じような夢を見た気がするが、思い出せない。
そもそも、自分は、さっきまで家にいたような……。
もしかすると、これも夢なのだろうか?
確認するために、自分の膝をつねってみる。
この痛みからすると、現実だという気がした。
首をかしげながらも、しばらくして授業は終わり、タイチは、いつものように家に帰っていった。

その夜、タイチは、またあの夢を見た。
前に見たのと同じ男の人が、こっちに向かって手招きをしている。
「タイチくん、約束通り迎えにきたよ。さあ、こっちへおいで」
タイチは、ふらふらと男の人の方へ歩いていった……。
そこで目が覚めた。
何となく、夢でよかったと思った。
のどが渇いたタイチは、一階の台所に降りていった。
電気のスイッチを入れたが、明かりがつかない。
蛍光灯が切れているのだろうか。
冷蔵庫を開けて、冷えたお茶をガラスコップに注いで、飲みほす。
すると、コップの表面に妙なものが映っているのが見えた。
それは人の形をしているようだ。
おそるおそる背中ごしに後ろへ顔を向けると、台所の入り口に、夢で会った男の人がいた。
「わっ!」
驚いた拍子にコップを落としてしまった。
床にぶつかったコップは、小さな破片になって、あたりにちらばった。
すっと音もなく近づいてきた男の人が、タイチの腕をつかむ。
その手は氷のように冷たく、いやな感触だった。
「さあ、一緒に行こう」
男の人が言った時、帽子の下の顔が見えた。
目はつりあがり、とがった耳の近くまで、大きく口がさけていた。
その顔が、にたりと恐ろしげな笑いをうかべている。
「ば……ばけもの……!」
「何を言ってるんだい。君だって同じじゃないか……」
空いている方の手で自分の顔をさわってみる。
つりあがった目、さけた口、とがった耳……。
それは、まさしく目の前にいる男の人と同じ顔だった。
「夜だけの世界に人間はいないからね……。私と同じになれば、君も向こうに行くことができるんだよ……」
その言葉が終わった途端に、男の人とタイチは、やみの中に消えていった。
後には、ただ割れたガラスだけが残っていた。
――それ以来、タイチは今でも行方不明のままだ……。

みんなが寝静まった時刻、住宅地の前にある一本の街灯の下に、小さな女の子がたたずんでいる。
女の子のそばには、白い毛玉のようなものが浮かんでいた。
「そう……あれは、子供をやみの世界に連れていく、夜更かしの悪魔だったの。可哀想に、タイチくんは、もう戻ってこられないわ……」
女の子――花子さんは住宅地に背を向けると、またどこかへ去っていった……。
――あなたは、いつも夜更かしをしていませんか?
夜更かしの悪魔には、ご注意を……。

[完]
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プロフィール

研究員D

Author:研究員D
「ギリギリ映らない画面端にいるエキストラ研究員」のイメージというのが名前の由来。
基本的に特撮ヲタ。
また、マイナーなものに惹かれる体質。
特撮全般および一部のアニメや漫画(マイナー作品とか古いの)を愛する。

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