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第10話「雨の日に……」

――今から15年ほど昔のことです。
その日、二つの事件が起こりました……。

昼すぎから降りはじめた雨は、エリカ達が帰るころには、どしゃぶりに変わっていた。
雨つぶが窓ガラスをたたく音が、耳に響く。
「先生、さよならー」
エリカは、担任のオオタニ先生にあいさつをして、正面玄関に向かった。
「雨が降ってるから気を付けて帰るんだぞ」
それを見送った先生が職員室に入っていくと、奥のほうで、教頭先生がテレビを見て声を上げた。
「えらいことになってるなあ」
「どうしたんですか?」
オオタニ先生も、教頭先生の横からテレビ画面をのぞきこんだ。
この近くにある別の小学校で、いじめられていた生徒の一人が飛び降り自殺をしたらしい――。

「うわー、すごい雨……。カサ持ってきてないしなあ……。いいや!走って帰っちゃおう!」
さいわい、エリカの家は、学校からあまり離れていないところにあった。
ランドセルを背負ったエリカは、意を決して飛び出し、雨の中を走り出した。
しばらくして、傘をさしたエリカのお母さんが、角を曲がって学校のほうへ向かっていた。
手には、赤い傘を持っている。
雨が本格的になってきたので、エリカを迎えにきてくれたのだ。
その途中、遠くの歩道に何かが横たわっているのが目に入った。
嫌な予感がしたお母さんが急いで行ってみると、そこにはエリカが、びしょぬれになって倒れていた。
お母さんは慌ててエリカを抱き起こし、ランドセルを降ろさせて自分の腕にかけた。
そして、ぬれるのも構わずに、エリカを背負って、急いで家まで連れて帰った。
帰ってから体温を測ってみると、ひどい熱だ。
お母さんはエリカを着替えさせると、とりあえずソファに寝かせて毛布をかけ、病院に電話するために廊下に出て行った。

――しばらくして、エリカは目を覚ました。
だるい身体を無理やりに起こして毛布から出る。
頭がぼうっとしている。
なんで家で寝かされているんだろう?
走って帰る途中で、急に気が遠くなったところまでは覚えている。
その前に何かあったような……。
そうだ。
見たことのない女の子が、自分の前にカサもささずに立っていたんだ。
目が合ったと思ったら、なんだか力がぬけて……。
そして、女の子は何か言っていた。
声は聞こえなかったが、口の動きで言っている内容が分かった。
「エ・リ・カ」
女の子は、確かに、そう呟いていた。
どうして知らない子が私の名前を……?
不思議なことに、家の中には誰もいる気配がなく、静まりかえっている。
すると、キッチンで小さな物音がした。
相変わらずぼんやりとしながらも、エリカは、ふらふらと音が聞こえたほうに向かう。
やっぱり、そこには誰もいない。
熱もあるみたいだし、さっきの音は気のせいだったんだろうか。
そこでエリカは、ふと気が付いた。
あれ……?
あたし、なんでここに来たんだろう?
熱があるんだったら、そのまま寝ていればいいのに、わざわざ起きて歩き回るなんて……。
まるで、何かに引っ張られたようだった。
そう思ったとたん、カタカタという音が聞こえてきた。
見ると、キッチンに置かれているおはしやスプーンやフォークが、ひとりでに動いているではないか。
その音は、ますます大きくなり、ついには、その食器類が勢いよく飛び出し、エリカの方に向かってきた。
エリカは悲鳴をあげて、思わず頭を抱えてしゃがみこんだ。
頭の上を食器類が通りすぎ、後ろにあった冷蔵庫にぶつかって、辺りにちらばった。
急に意識がはっきりして、怖くてたまらなくなったエリカは、二階にある自分の部屋に駆けこんだ。
――なに!?一体なんなの!?
ドアを閉めて鍵をかけ、荒い息をつく。
急に走ったせいで、ひどいめまいがする。
その時、エリカのお気に入りのオルゴールが、いきなり鳴りだした。
よく耳をかたむけると、音楽の中に誰かの声がまじっているように聞こえる。
「……エ……リ……カ……」
「きゃっ!」
その声から逃げるように、エリカは、窓を開けてベランダに転がり出た。
外では、雨がはげしく降っていた。
屋根があるから、ぬれることはないが、雨が地面を打つ音にくわえて、かみなりまで鳴っている。
――ピカッ!
空を見上げた時、いなびかりがして、かみなりがエリカのところに落ちてきた。
しかし、エリカは無事だった。
エリカの前にあらわれた白い毛玉のようなものが、エリカの代わりに、かみなりに打たれたのだ。
白い毛玉は、けむりを上げながら、庭に向かって下りていったみたいだった。
驚いて見下ろしているエリカの耳に、雨ともかみなりともちがう音色がとどいた。
どこからか聞こえてくる、子守歌のような、ハーモニカの優しいメロディーだった。
それを聞いている内に、エリカは、いつの間にか眠ってしまっていた――。
「ん……」
「エリカ、大丈夫?」
目を覚ますと、隣にはお母さんがいた。
ここはタクシーの中で、これから病院に行くところだという。
さっきのは……夢?今までベランダにいたはずだけど……。
――もう大丈夫よ。
考えていると、そんな声が頭に響いてきた。
発車していくタクシーの後ろに、傘をさした、おかっぱ頭の女の子が立っていた――。

「――次のニュースです。タイヤがスリップした大型トラックが、下校途中の児童に接触する事件が起きました。名前は、ナカムラエリカさん……」
立ち上がった教頭先生は、テレビを消した。
実は、ナカムラエリカちゃんというのは、自殺した女の子……ユリコをいじめていた子だった。
ユリコは、いじめられたのがくやしくて、エリカのことをうらみながら死んでしまったのだ。
ところが偶然にも、エリカはユリコが飛びおりるよりも前に、交通事故で亡くなっていた。
行き場をなくしたユリコの思いは、たまた近くを通りかかった同じ年、同じ名前のエリカのところにあらわれてしまったのだった。
誰もいなくなった学校の前庭を、一人の女の子が横切っていく。
後ろには二人の女の子がいて、片方の子が、もう片方の子に涙を浮かべてあやまっていた。
その姿が、すきとおっていき、やがて消えた。
「今度は仲良くできるといいね」
「そうね……」
そんな声がしたかと思うと、いつのまにか、もうそこには誰もいなくなっていた。
雨は、まだ降り続いている……。

[完]
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プロフィール

研究員D

Author:研究員D
「ギリギリ映らない画面端にいるエキストラ研究員」のイメージというのが名前の由来。
基本的に特撮ヲタ。
また、マイナーなものに惹かれる体質。
特撮全般および一部のアニメや漫画(マイナー作品とか古いの)を愛する。

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