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第九章「予兆」―6―(前編終了)

「……待ってくれ!」
芹沢が立ち止まる。
「なんです」
電気のスイッチを切って、背中越しに振り向く。
返事をした声は、ぞっとする程に冷たい響きを持っていた。
「……俺の命をくれてやる。俺を……俺をワームにしてくれ……!」
悩んだ末の結論だった。
死ぬのは怖い。
だが、何も変えられないまま、人間として生き続けることに何の価値がある。
あの女に追いつき、追い越すためには、やはりこれ以外にない。
――ワームとして生きる。それでいいではないか。
人という、ちっぽけな生物的枠組みに囚われて、先へ進めなくなることこそ愚かと言うべきだ。
奴がライダーとなって超人に変わるなら、俺はワームとなって人を超えてやる。
どちらにせよ、最初に話を持ち掛けられた時に断れなかった時点で、魂は売ってしまっていた。
後には引けない。
そう、しばらく眠るだけだ。
すぐに終わる。
ただそれだけで、望んでいるものが全て得られるのだ。

芹沢が東に向き直り、ずっとかけていたサングラスを外す。
その瞳は、レンズと同じ緑色だった。
姿が変わっていく。
白銀色の成虫体――地球のオニヤンマに似た性質を持つ『シーボルトワーム』だ。
「それが賢い選択です」
ワームの言葉を聞いて、東は目を閉じた。
体から一切の力が抜ける。
彼の意識は、吸い込まれるように、底のない闇の淵へと消えていった。
明かりが消えた部屋で、シーボルトワームが、倒れた東を見下ろしている。

「さようなら、東慎。そしてようこそ、我々の世界へ……」
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研究員D

Author:研究員D
「ギリギリ映らない画面端にいるエキストラ研究員」のイメージというのが名前の由来。
基本的に特撮ヲタ。
また、マイナーなものに惹かれる体質。
特撮全般および一部のアニメや漫画(マイナー作品とか古いの)を愛する。

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