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第九章「予兆」―5―

「そう。あなたには無理です。そして、分かってはいるが認めたくはない。だから取ることが出来ない」
芹沢は容赦なく、矢継ぎ早に指摘してくる。
この場の流れは、今や完全に彼の支配下にあった。
反論することもせず、東は押し黙った。
「ですが……打開策が一つだけあります」
人々に希望を与える教祖のように芹沢が言った。
東の目が、彼の顔を見た。
すがるような視線だった。
方法があるというなら何でもいい。
待っていても状態が好転しないなら、この際、それに乗るしか道はない。
「俺は、どうすればいい……」
「あなたも我々の仲間になればいいのですよ。人間としての生を捨て、ワームとして生まれ変わるのです」
「なんだと!?」
「驚くことはありません。そして資格者に擬態すれば、あなたはザビーにもドレイクにもなれる。記憶を完全にコピーした存在がいたならば、それは本物のあなた自身と同じことではないですか?」
つまり、芹沢は自分に死ねと言っているのだ。
――馬鹿な。そんなことが出来る筈がない。
死ねと言われて死ぬ者などいるものか。
第一、自分が命を落とした後で、この男が約束を守るとは限らない。
馬鹿げている。
選択にもならない提案だ。
心ではそう思っていても、東は迷っていた。
苦悩の表情で、下ろした拳を握りしめる。
手の平に、ぐっと爪が食い込む。
――本当に、それしか方法がないのなら……。

「私は全てを力で解決しようとする姿勢を好みません。無理にとは言いませんよ。ここで契約を破棄したいと言うなら、それも結構です」
東の横を通り過ぎ、芹沢が部屋を出ていこうとする。
「ただし、あなたは一生負け犬のままです。その方が、一瞬の死よりも、よほど恐ろしいことだと思いますがね」
去り際の言葉が、東の胸に突き刺さる。
おじけづいている自分を蔑むような口調だった。
所詮は小物だったか、と言われているようだ。
脳裏に藤有沙の顔が浮かび、その顔が、芹沢と一緒になって自分の事をせせら笑った。
それをきっかけにして、とうとう東は決意した。
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研究員D

Author:研究員D
「ギリギリ映らない画面端にいるエキストラ研究員」のイメージというのが名前の由来。
基本的に特撮ヲタ。
また、マイナーなものに惹かれる体質。
特撮全般および一部のアニメや漫画(マイナー作品とか古いの)を愛する。

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