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第16話「夕やみの空」

久々に花子さんがきたの二次創作をうpします。
今までは、できるだけ難しい漢字は使わないようにすることで、児童書の雰囲気を再現しようとしていましたが、今回は少し変えてみました。
見ていただければ分かりますが、文章の全てをひらがなとカタカナのみで表記してあります(やみ子の“子”は固有名詞なので例外)。
この方法を選んだ理由としましては、二つあります。
これまでのやり方だと、どうにもこうにも中途半端な感じがして、個人的に不満があったことが一つ目。
二つ目の理由は、漢字を一切使わないという縛りで、どこまでできるかを試してみたかったということです。
読みづらいのは重々承知していますが、読点を多めにして、できるかぎり読みやすいように配慮いたしましたので、なにとぞご了承ください。





「お、たのしそうなことしてるじゃん。おれもいれてくれよな。もちろんいいだろ?」
そういってはいってきたダイスケをみて、じんじゃのけいだいでサッカーをしていたよにんは、だれもがいやなかおをした。
「なんだよ。せっかくいいあそびばしょをみつけたとおもったのに……」
ボールのもちぬしの、よねんにくみのユウイチが、ぼそっとつぶやいた。
ダイスケは、ユウイチたちのクラスのなかでいちばんからだがおおきくて、ちからもつよい。
それをいいことに、いつもじぶんかってなことばかりしては、まわりにめいわくをかけていたのだ。
ほかのみんなはなんとかしたいとおもっていても、ひどいめにあわされるのがこわくて、だれもちゅういすることができなかった。
「おれがけるから、おまえらはキーパーだ。うまくキャッチしろよ。いくぞ、そーれ!」
できるだけうしろにさがり、じょそうをつけたダイスケが、いきおいよくボールをける。
おもいっきりけっとばされたサッカーボールは、よにんのあたまのうえをとびこえて、はやしのおくにとんでいってしまった。
「なんだよ、ちゃんととれっていっただろ。やっぱサッカーなんてつまんねーな。いえにかえってゲームのつづきやろっと」
ふまんそうなかおをしたダイスケは、あやまりもせずに、さっさとかえっていった。

「あー、マジでムカつく!ダイスケのやつ!せっかくあたらしくかってもらったボールをなくすなんて!」
どれだけおこってみても、ユウイチのいかりは、いっこうにおさまらなかった。
しんぴんのボールをらんぼうにあつかわれたこともはらがたったが、じぶんのだいすきなサッカーをバカにされたのもくやしかった。
ほんとうなら、このきもちをダイスケにぶつけてやりたいが、そのゆうきがない。
かげぐちをいうことしかできないじぶんにも、ダイスケにたいするいかりとおなじくらいに、はらがたっていた。
いっしょにいたさんにんは、じゅくにいかなければならないじかんなので、ひとあしさきにかえってしまっている。
ひとりだけのこったユウイチは、みうしなったサッカーボールをさがすために、えだをかきわけながら、はやしのなかをすすんでいた。
「あっ、あれかな?」
まえのほうにあるひらけたばしょに、なにかまるいものがころがっているのをみつけたユウイチは、それをかくにんするためにちかづいていった。
しかし、それがさがしているものではないことは、すぐにわかった。
つちのうえにおちているのは、ところどころにコケがはえている、じぞうのくびだったのだ。
そばには、くびのないじぞうがたっているところをみると、ここからとれてしまったらしい。
ながいあいだおかれているのだろう。
あめやかぜのせいで、ひょうめんがけずられてしまい、かたちがかわっているところは、いかにもむかしからありそうなものにみえる。
まわりがみょうにしずかなこともあり、なんだかぶきみにかんじられて、ユウイチはいきをのんだ。
「うわっ、なんだよ。きもちわるいなあ。こんなのどうでもいいから、はやくボールをさがさないと……」
ダイスケのシュートがあたったせいで、じぞうのくびがとれたのだとすると、このちかくにボールがあるのかもしれない。

きをとりなおして、さきにすすもうとしたユウイチのせなかに、なにかがぶつかった。
おどろいてふりむいたユウイチのあしもとに、なぜかサッカーボールがおちている。
ユウイチは、くびをかしげた。
ここまでくるとちゅうで、ボールのありそうなばしょは、くまなくさがしたはずだ。
それなのに、どこからボールがでてきたのだろうか。
「まあ、いいや。なくならなくてよかった」
むねをなでおろしたユウイチは、よごれてしまったボールをひろいあげようとして、みをかがめた。
そのときだった。
「あーあ、やっちゃった」
ふいに、ユウイチのうしろで、だれかがいった。
こえのするほうには、しろいワンピースをきた、ちいさなおんなのこがたっていて、ながいふえをバトンのようにまわしていた。
そのおんなのこは、ユウイチのかおをみて、いじわるそうにわらっている。
「いーけないんだ、いけないんだ。あんなことしちゃうなんてさ。あたし、しーらないっと」
「いきなりなんだよ。それに、あんなことって?」
そこまでいって、ユウイチはきがついた。
このおんなのこは、くつをはいていない。
そればかりか、おんなのこの、はだしのままのしろいあしは、ちっともよごれていなかった。
くつをはかずに、はやしのおくまで、つちのうえをあるいてきたなら、あしはよごれているはずだ。
「あれをこわしちゃったでしょ。いまにたいへんなことがおきちゃって、こわいこわーいめにあうんだよ。もしかしたら、にどとかえってこられなくなるかもね」
それだけいうと、ちいさなおんなのこは、おおきなきのうしろにかくれてしまった。
おどかされてふあんになったユウイチは、おんなのこをよびとめようとして、すぐにおいかけた。
ところが、そこにはだれもいなかった。
あたりをさがしてみても、おんなのこのあしあとさえ、ひとつものこっていない。
まるで、さいしょからいなかったようだった。
せすじがさむくなったユウイチは、サッカーボールをひろうと、いそいではやしのなかからでていった。

そらをみあげると、たいようがしずみかけていて、あたりはくらくなりはじめていた。
このじかんなら、まだだれかとすれちがってもおかしくないのだが、ふしぎなくらいにひとけがない。
もしかしたら、このゆうぐれのせかいには、じぶんだけしかいないのではないか。
そんなかんがえがあたまをよぎり、ユウイチのあるきかたは、しぜんとはやあしになっていた。
サッカーボールをこわきにかかえ、さっきまでのことをおもいださないようにしながら、いえじをいそぐ。
しばらくあるいていると、まえのほうから、だれかがちかづいてくるのがめにはいった。
じぶんいがいのひとにであえたことで、ユウイチはあんしんし、それとなくひとかげのほうをみてみた。
ぎゃっこうになっているせいで、ユウイチからはみえにくかったが、どうやらおんなのこらしいことがわかった。
ながいスカートをはいた、かみのみじかいおんなのこが、くつのおとをひびかせながら、じょじょにユウイチのほうにあゆみよってくる。
「ユウイチさん」
ちょうどすれちがい、おたがいのかおがみえるくらいのきょりになったときに、おんなのこがユウイチをよびとめた。
おだやかなちょうしだが、あいてにうむをいわさないような、つよいひびきがかんじられるこえだった。
「え?」
このおんなのこは、なぜじぶんのなまえをしっているのだろう。
すくなくとも、おなじクラスにはいないこだし、がっこうのなかでもみたおぼえがない。
いくらかんがえても、ユウイチには、こころあたりはまるでなかった。
「あの、きみはだれ?」
おんなのこは、どことなくじょうひんなえみをうかべると、ふたたびくちをひらいた。
「わたくしは、よみともうします。ユウイチさん、あなたをむかえにまいりましたの。いっしょにきていただけますか?」
そういって、おんなのこがみぎてをさしだしてくる。
そのいろのしろいてをみたユウイチは、はやしのなかであったおんなのこをおもいだした。
めのまえにいるおんなのこも、さっきのちいさなおんなのこも、まるでちがかよっていないかのように、はだがまっしろだったのだ。
「むかえにって?なにいってんだか、よくわかんないよ。あそびあいてをさがしてるなら、あそんであげてもいいけどさ。でも、きょうはだめだよ。もうおそいから、またあしたね」
そういってかえろうとしたが、よみとなのったおんなのこは、ユウイチのてをにぎってきた。
そのてはつめたく、こえをあげるかわりに、ユウイチはサッカーボールをおとしてしまった。
「そういうわけにはまいりません。あなたは、わたくしのだいじなおきゃくさまですもの。ていちょうにおもてなししなければ、わたくしのきがおさまりませんのよ」
ユウイチは、なにかいおうとしたが、ことばがでてこない。
しかたなく、おんなのこのてをふりはらおうとしたが、それもできなかった。
ユウイチのからだから、みるみるうちに、ちからがぬけていく。
ユウイチはしらなかったが、このおんなのこはよみさんといって、じぶんがきにいったあいてをつれさってしまうというおばけだったのだ。
いしきがとおくなり、ひんのいいわらいをうかべるよみさんのかおが、じょじょにぼんやりとしはじめたとき、どこからか、かぜをきるおとがきこえた。

ユウイチのそばにたつよみさんにむかって、くろびかりするなにかが、いっちょくせんにとんでくる。
それは、ドクロのかたちをした、ぶきみなペンダントだった。
まゆをひそめたよみさんは、ユウイチのてをはなすと、かるくとびのいてペンダントをかわした。
「きぐうですわね、やみ子さん」
そういったよみさんのしせんのさきには、くろいふくをきた、ながいかみのおんなのこがたっていた。
やみ子さんとよばれたおんなのこは、じめんにあたってはねかえってきたペンダントをうけとめると、するどいめつきで、よみさんをみかえした。
「あいにく、そいつには、あたしがさきにめをつけていたんだ。おまえのでるまくはないよ。さっさときえな」
やみ子さんがすごんでも、よみさんは、まったくどうじなかった。
「まあ、そうでしたの。それがなにか?」
よみさんは、ふくについたほこりをかるくはらうと、こともなげにいった。
それをみたやみ子さんは、すこしきにさわったらしく、さっきよりもくちょうをつよめた。
「てをひけといってるんだ。いたいめにあいたくなかったら、さっさとかえりなよ」
よみさんのひょうじょうはかわらない。
さきほどまでとおなじように、おだやかにほほえんだままだ。
「やみ子さん。あなた、あのかたから、めをはなしていたんじゃありませんこと?まけおしみをいって、じぶんのしっぱいをごまかすなんて、すこしみっともないですわよ」
よみさんのことばを、やみ子さんは、だまってきいていた。
ふきぬけていったつよいかぜが、やみ子さんのながいかみのけを、おおきくなびかせる。

「そうかい。じゃあ、こうするまでだよ!」
ちょうはつするようないいかたをされて、やみ子さんのがまんは、げんかいにたっしたらしい。
ごうをにやしたやみ子さんは、おおきくうでをひくと、そのてのなかにあるペンダントを、よみさんめがけてなげつけた。
よみさんはすこしもあわてずに、はなかざりのついたあおいリボンをはなって、ペンダントをはじきとばしてしまった。
ぶつかりあったペンダントとリボンは、くうちゅうでまったあとで、おたがいのてもとにもどる。
「あいかわらず、わかりやすいですわね。やみ子さんらしいやりかたですわ。らんぼうなやみ子さんに、よくおにあいですことよ」
「うるさい!おまえはしゃべりすぎなんだよ!」
よみさんをにらむやみ子さんと、よゆうのあるわらいをうかべているよみさんが、ペンダントとリボンをかまえてむかいあう。

「いまのうちに、にげよう……!やばそうなかんじだったし、またつかまったら、なにをされるかわからないぞ……!」
サッカーボールをかかえたユウイチは、やみ子さんとよみさんがいいあっているすきに、いちもくさんにはしりだしていた。
いまになってかんがえてみれば、じんじゃのはやしにいたおんなのこがいっていた、たいへんなことというのは、このことだったのかもしれない。
さいしょにあらわれたおんなのこはもちろんだが、あとからでてきたおんなのこのほうも、なんだかこわいかんじがする。
ユウイチは、ふたりにみつからないことをいのりながら、せまいろじにはいっていった。
ところが、ろじをぬけたところで、なにかがものかげからとびだしてきて、ユウイチのゆくてをふさいでしまった。
つんのめったユウイチは、ころびそうになりながらも、なんとかたちどまった。

あらわれたのは、いっぴきのいぬだった。
ところが、そのいぬは、きげんがわるいらしい。
かおをあげたユウイチと、めがあったかとおもうと、ひくいうなりごえをあげたのだ。
きばをみせるようにしてくちをあけたいぬは、ユウイチのすがたをしょうめんにとらえると、ぜんしんをばねのようにしてとびかかってきた。
「うわっ!」
ユウイチは、とっさにあたまをさげた。
そのこうどうはせいこうし、とっしんしてきたいぬは、ユウイチをとびこえてちゃくちした。

ふりむいたユウイチは、そのいぬを、あらためてかんさつしてみた。
みためだけは、なんのへんてつもない、どこにでもいる、ごくふつうのいぬにみえる。
しかし、そうおもえたのは、いっしゅんだけだった。
いぬのひとみがぶきみにかがやき、そのかたちがねんどのようにゆがんだかとおもうと、きょだいなくちをもつ、おそろしいすがたのかいぶつにかわったのだ。
「う、うわあああっ!?」
おどろいたユウイチは、みつからないようにしていたこともわすれて、おおきなひめいをあげた。

どうようしたユウイチは、はんしゃてきに、てにもっていたサッカーボールをなげつけた。
しかし、それは、かんたんにはじかれてしまった。
あかぐろいひとみのかいぶつが、おおきなくちをあけて、ユウイチのほうにちかよってくる。

「どうやら、なにかあったようですわね。やみ子さん、つづきはおあずけですわ」
ユウイチのひめいをきいたよみさんは、いそいでろじうらにやってきたが、ひとあしおそかったようだ。

くちをおおきくひらいたかいぶつは、ユウイチにおそいかかると、あっというまにのみこんでしまった。

「たったいま、あなたがのみこんだかたは、わたくしのたいせつなおきゃくさまですの。かえしていただきますわ!」
すかさずよみさんがリボンをとばすが、かいぶつのうごきはとてもすばやく、あっさりとよけられてしまった。
「なんですって!?」
これはよそうがいだったのか、さすがのよみさんも、めずらしくおどろいたようなかおをしてみせた。
そこへ、よみさんをおってきたやみ子さんが、かけつけてきた。

「だから、あたしのじゃまをするなといったんだ!こいつは、あたしがやっつけてやるよ!」
かいぶつのうしろにまわったやみ子さんは、よみさんにつづいてペンダントをなげたが、これもかわされてしまう。
「ちっ、おもったよりすばしっこいね。なまいきだよ」
もどってきたペンダントをうけとめたやみ子さんは、くやしそうにしたうちした。

「さっきのこどもはね、こいつにつけられていたんだ。このかいぶつをやっつけるためには、こいつが、こどもをおそうしゅんかんをねらいたかったんだよ。おまえがじゃましたせいで、それがだいなしになった」
ユウイチが、じんじゃでであったおんなのこは、やみ子さんのいもうとのマホマホだった。
マホマホからはなしをきいたやみ子さんは、かいぶつがでてくることをよそうして、それをやっつけるためにユウイチをみはっていたのだった。
「いまは、そんなことをいっているばあいではないのではなくて?もんだいは、これからどうするかですわ。このまま、にらみあいでは、らちがあきませんもの」
「ふん、いわれなくてもわかってるよ!」
ふたりとも、かいぶつからは、めをはなしていない。
やみ子さんとよみさんは、ぜんごからかいぶつをはさんだじょうたいのままで、どうするべきかをかんがえていた。

さいわいなことに、なんとかするきっかけは、すぐにおとずれた。
とつじょとして、あたりにふしぎなふえのねがひびき、かいぶつのうごきがとまったのだ。
なにかにきづいたやみ子さんがまわりをみまわすと、くらがりのなかであかるくひかっているがいとうのそばに、ちいさなひとかげがある。
やみ子さんは、そのすがたをかくにんすると、しずかにほほえんだ。
そこには、ふえをふいているマホマホがいて、そのねいろが、かいぶつをにぶらせ、うごけなくしているのだ。

「こいつはマホマホのおてがらだね」
うすくほほえんだやみ子さんは、ペンダントをもつてをにぎりしめ、つよくちからをこめた。
また、やみ子さんのことばをきいて、よみさんにもわかったようだった。
うなずくと、リボンをかまえて、かいぶつのほうにむきなおる。
「さあ、これでもくらいな!」
「これは、さっきのおかえしですわ!」
やみ子さんとよみさんは、このきかいをのがさず、ペンダントとリボンを、どうじになげはなった。

ペンダントとリボンのふたつは、やのようにするどくとんで、こんどこそめいちゅうした。
かいぶつは、うめきごえとともにきえていき、そのあとには、きをうしなったユウイチがたおれているのがみえる。
それを、きょうみなさげにみたやみ子さんは、もどってきたペンダントを、もとどおりくびからさげなおした。

「ふん。こいつには、すこしだけてをやかされたよ。でも、これでおしまいだね」
そういったとき、やみ子さんは、よみさんのすがたがないことにきがついた。
それだけではない。
おなじようにユウイチもいなくなっている。
「わたくしは、これでしつれいさせていただきます。ユウイチさんは、わたくしのおきゃくさまですので、ていちょうにおつれしてさしあげますわ」
ひがおちて、すっかりくらくなったそらに、よみさんのおだやかなこえがきこえた。
よみさんのことばによると、ユウイチもいっしょにいるようだが、ふたりのすがたはまったくみえなかった。
「では、ごきげんよう」
そのことばをさいごに、よみさんのこえはきこえなくなり、しずかになったろじうらには、やみ子さんだけがたたずんでいた。

「まったく、わたくしとしたことが、まんまといっぱいくわされましたわ。こんごは、こういうまちがいは、ないようにしたいですわね」
よみさんは、カップについだこうちゃをひとくちのむと、ふかくためいきをついた。
そのとなりには、なぜかマホマホがいて、てにもったクッキーを、おいしそうにほおばっていた。
ユウイチをつれさったよみさんだったが、それはほんものではなく、マホマホがばけたにせものだったのだ。
「へへー。あー、おいしかった。ごちそうさまっ」
よみさんがふるまうおかしにありつきたかったマホマホは、ほんもののユウイチをろじうらにかくしておいて、そのかわりに、じぶんからつれてこられたのだった。
「はいはい、おそまつさまでした」
よみさんは、もういちどためいきをついて、すわっていたいすからたちあがった。

よみさんがマホマホをつれてたちさったあと、しばらくして、ユウイチは、じりきでおきあがった。
ついさっきまで、じぶんのみには、とてもしんじられないようなことがおきていたのだ。
それらは、すべてがゆめかまぼろしのようにもおもえたが、すぐそばにやみ子さんがたっていることから、ほんとうにおこったことなのだとりかいできた。
「きみは……」
やみ子さんも、ユウイチがのこっているのをみて、じょうきょうをさとったらしい。
へんそうしたマホマホが、よみさんについていったとすると、あとでむかえにいかなければならない。
「なんだ、ようやくきがついたのか」
やみ子さんは、ユウイチのかおをみると、そっけないくちょうでいった。
それでも、やみ子さんのおかげで、じぶんはたすかったのだということが、なんとなくわかったため、ユウイチは、おれいをいわなければならないとおもった。
「あの……。あ……ありがとう……」
しかし、ユウイチがかんしゃのことばをいっても、やみ子さんのぶあいそうなたいどは、やはりかわらなかった。
「ふん。おまえをたすけたわけじゃない。あたしは、あいつをやっつけたかっただけさ」
それだけいうと、やみ子さんは、ユウイチにせなかをむけた。
つめたいよかぜが、やみ子さんのやみのようにくろいかみをなでて、そのままとおりすぎていった。
「おまえたちみたいに、こまったことがあると、すぐたにんにたよろうとするやつらは、だいきらいだからな」
ユウイチのきもちをみすかしたようにいいのこすと、やみ子さんは、ろじうらからたちさっていった。
ユウイチは、なにもいいかえせなかった。
あとにのこされたユウイチは、ただだまって、やみ子さんのうしろすがたをみおくった。

「なあ。これ、おれにかしてくれよな。いいだろ?」
「え……。でも……」
よくあさになり、とうこうしてきたユウイチがきょうしつにはいると、からだのちいさいマサヒコが、ダイスケにつめよられていた。
ふたりからはなれたところでは、なんにんかのクラスメイトがかたまって、こえをひそめてはなしあっている。
「またやってる。ほんとうにさいなんだよな。あんなの、かわいそうだよ」
「でも、マサヒコもわるいよ。だいじなものをがっこうにもってくるなんて。ダイスケにみつかったら、とられちゃうにきまってるのにさ」
「クラスかえてほしいよな。こんなのふこうへいだよ。おれらだけ、いちねんかんも、ずっといやなおもいしなきゃいけないなんて。マジさいあく」
ランドセルをおろしたユウイチは、それをつくえにおくと、ダイスケとマサヒコのやりとりを、だまってみつめていた。
あたまのなかで、きのうのやみ子さんのことばが、おもいだされる。
なやんだすえに、ふたりのところまであるいていったユウイチは、いをけっしてこうどうをおこした。

「やめろよ。いやがってるだろ」
ふりかえったダイスケは、いがいそうなひょうじょうをしていたが、すぐにいつものちょうしでいった。
「なんだよ。べつに、なにもしてないじゃん。ただ、ちょっとかしてもらおうとしてるだけだろ」
ダイスケをまえにしたユウイチは、ついきおくれしそうになったが、まけずにいいかえした。
「だれがみても、いやがってるだろ。そんなこともわかんないのかよ」
ダイスケのひょうじょうがかわった。
ユウイチのたいどが、おもったよりもしつこいので、きにいらなかったらしい。
「ユウイチ。さっきから、いちいちうるさいんだよ。おまえ、なんかムカつくぞ」
ダイスケが、にぎりこぶしをつくってみせる。
おどかしのつもりだろうが、もしかしたら、ほんとうになぐられてしまうかもしれない。
それでも、ここまできたいじょう、ユウイチは、いっぽもゆずらないときめていた。
「それできがすむなら、やってみればいいさ。ぼくは、へいきだよ。そんなのぜんぜんこわくない」
そのことばをきいたダイスケが、ユウイチのむなぐらをつかんだ。
ダイスケのまゆは、いかにもふきげんそうに、おおきくつりあがっている。
ところが、そのひょうじょうが、しだいにかわっていった。
ユウイチからはみえていなかったが、じょうきょうをみまもっていたクラスメイトたちが、ユウイチのうしろにあつまってきていたのだ。
「な、なんだよ……。なにみてんだよ。あっちいけよ!」
ダイスケがどなっても、だれひとりとして、そのばから、うごこうとしなかった。
ユウイチのこうどうが、みんなのこころをあとおししたのだ。
「わ、わかったよ……。かえせばいいんだろ……。ご、ごめんな」
すっかりおとなしくなったダイスケは、ちいさなこえで、マサヒコにことばをかけた。

そのひから、はんせいしたらしいダイスケは、それまでのような、かってなふるまいはしなくなった。
やみ子さんは、ユウイチをたすけてくれたわけではないのかもしれない。
それでも、ユウイチは、やみ子さんにかんしゃしている。
ゆうきをふりしぼることができたのは、まぎれもなく、やみ子さんのおかげだからだ。


[完]





今回は、やみ子さんのダークヒーロー(ヒロイン?)っぷりを前面に出して、誰一人として主人公を救おうとしておらず、出てくる人物全員が自分の勝手で動いているにも関わらず、とにかく運が良かったので助かるという話にしてみました。
本人は人を助ける気なんてサラサラないのに、結果的に人助けという形になってしまうというのが、ダークヒーローの醍醐味の一つだと思ってます。
元々は、単にやみ子とよみさんのガチバトルにしようと考えてましたが、仲がよろしくない雰囲気にはなった気がするので、その点は満足でっす。





ここからは、ボツにした部分を、ちょっとしたおまけとして置いてます。
              ↓
みると、きをうしなっているユウイチのそばに、よみさんがしゃがみこんでいて、そのかおをのぞきこんでいるではないか。
まだあきらめていないのか、よみさんは、あくまでユウイチをつれていくつもりらしい。
「やみ子さんはもくてきをたっせいできたようですし、わたくしも、じぶんのもくてきをはたさせていただきますわ。そうでなければ、ほねをおったかいがありませんもの」
よみさんがてをのばすと、ユウイチはうっすらとめをあけて、からだをおこした。
「もうあんしんですわ。あのかいぶつはわたくしたちがたいじいたしました。さあ、あとはわたくしについていらっしゃるだけですわよ」
よみさんがかたりかけると、さっきまでとはうってかわって、ユウイチはうれしそうにわらった。
そのようすは、まるでべつじんのようだった。
「わかっていただけて、わたくしもうれしいですわ。では、まいりましょう」
ユウイチは、じぶんからよみさんのてをとると、いじわるそうにわらってみせた。
そのひょうじょうをみたよみさんは、なにかひっかかるものをかんじていた。
ユウイチのては、こんなにいろがしろかっただろうか。
「うん、いいよ。あたし、おちゃがしは、おいしいケーキがたべたいなー」
ユウイチのすがたがぼやけていく。
つぎのしゅんかん、そこにいるのはユウイチではなく、よみさんとてをつなぐマホマホだった。
よみさんのあいてをしていたユウイチは、ほんものではなく、マホマホがばけたにせものだったのだ。
「……だめですわ。あなたのためによういしたものではありませんもの。ごめんなさいね」
いっしゅんだけかたまったよみさんだったが、すぐにいつものちょうしをとりもどし、そうこたえた。
しかし、マホマホはなっとくしなかった。
「えー!なんでなんでー!?さっきは、ついてきてっていったじゃん。いこうよいこうよー!」
おねがいをことわられたマホマホは、てあしをばたばたさせて、だだをこねはじめた。
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プロフィール

研究員D

Author:研究員D
「ギリギリ映らない画面端にいるエキストラ研究員」のイメージというのが名前の由来。
基本的に特撮ヲタ。
また、マイナーなものに惹かれる体質。
特撮全般および一部のアニメや漫画(マイナー作品とか古いの)を愛する。

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