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当ブログ概要

ここは私の精神衛生を保つ目的で脳内に設立された研究所です。
二次、あるいは一次の文章の創作がメインとなっています。
殺伐からほのぼのまでカバー……するのが目標です。
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第16話「夕やみの空」

久々に花子さんがきたの二次創作をうpします。
今までは、できるだけ難しい漢字は使わないようにすることで、児童書の雰囲気を再現しようとしていましたが、今回は少し変えてみました。
見ていただければ分かりますが、文章の全てをひらがなとカタカナのみで表記してあります(やみ子の“子”は固有名詞なので例外)。
この方法を選んだ理由としましては、二つあります。
これまでのやり方だと、どうにもこうにも中途半端な感じがして、個人的に不満があったことが一つ目。
二つ目の理由は、漢字を一切使わないという縛りで、どこまでできるかを試してみたかったということです。
読みづらいのは重々承知していますが、読点を多めにして、できるかぎり読みやすいように配慮いたしましたので、なにとぞご了承ください。





「お、たのしそうなことしてるじゃん。おれもいれてくれよな。もちろんいいだろ?」
そういってはいってきたダイスケをみて、じんじゃのけいだいでサッカーをしていたよにんは、だれもがいやなかおをした。
「なんだよ。せっかくいいあそびばしょをみつけたとおもったのに……」
ボールのもちぬしの、よねんにくみのユウイチが、ぼそっとつぶやいた。
ダイスケは、ユウイチたちのクラスのなかでいちばんからだがおおきくて、ちからもつよい。
それをいいことに、いつもじぶんかってなことばかりしては、まわりにめいわくをかけていたのだ。
ほかのみんなはなんとかしたいとおもっていても、ひどいめにあわされるのがこわくて、だれもちゅういすることができなかった。
「おれがけるから、おまえらはキーパーだ。うまくキャッチしろよ。いくぞ、そーれ!」
できるだけうしろにさがり、じょそうをつけたダイスケが、いきおいよくボールをける。
おもいっきりけっとばされたサッカーボールは、よにんのあたまのうえをとびこえて、はやしのおくにとんでいってしまった。
「なんだよ、ちゃんととれっていっただろ。やっぱサッカーなんてつまんねーな。いえにかえってゲームのつづきやろっと」
ふまんそうなかおをしたダイスケは、あやまりもせずに、さっさとかえっていった。

「あー、マジでムカつく!ダイスケのやつ!せっかくあたらしくかってもらったボールをなくすなんて!」
どれだけおこってみても、ユウイチのいかりは、いっこうにおさまらなかった。
しんぴんのボールをらんぼうにあつかわれたこともはらがたったが、じぶんのだいすきなサッカーをバカにされたのもくやしかった。
ほんとうなら、このきもちをダイスケにぶつけてやりたいが、そのゆうきがない。
かげぐちをいうことしかできないじぶんにも、ダイスケにたいするいかりとおなじくらいに、はらがたっていた。
いっしょにいたさんにんは、じゅくにいかなければならないじかんなので、ひとあしさきにかえってしまっている。
ひとりだけのこったユウイチは、みうしなったサッカーボールをさがすために、えだをかきわけながら、はやしのなかをすすんでいた。
「あっ、あれかな?」
まえのほうにあるひらけたばしょに、なにかまるいものがころがっているのをみつけたユウイチは、それをかくにんするためにちかづいていった。
しかし、それがさがしているものではないことは、すぐにわかった。
つちのうえにおちているのは、ところどころにコケがはえている、じぞうのくびだったのだ。
そばには、くびのないじぞうがたっているところをみると、ここからとれてしまったらしい。
ながいあいだおかれているのだろう。
あめやかぜのせいで、ひょうめんがけずられてしまい、かたちがかわっているところは、いかにもむかしからありそうなものにみえる。
まわりがみょうにしずかなこともあり、なんだかぶきみにかんじられて、ユウイチはいきをのんだ。
「うわっ、なんだよ。きもちわるいなあ。こんなのどうでもいいから、はやくボールをさがさないと……」
ダイスケのシュートがあたったせいで、じぞうのくびがとれたのだとすると、このちかくにボールがあるのかもしれない。

きをとりなおして、さきにすすもうとしたユウイチのせなかに、なにかがぶつかった。
おどろいてふりむいたユウイチのあしもとに、なぜかサッカーボールがおちている。
ユウイチは、くびをかしげた。
ここまでくるとちゅうで、ボールのありそうなばしょは、くまなくさがしたはずだ。
それなのに、どこからボールがでてきたのだろうか。
「まあ、いいや。なくならなくてよかった」
むねをなでおろしたユウイチは、よごれてしまったボールをひろいあげようとして、みをかがめた。
そのときだった。
「あーあ、やっちゃった」
ふいに、ユウイチのうしろで、だれかがいった。
こえのするほうには、しろいワンピースをきた、ちいさなおんなのこがたっていて、ながいふえをバトンのようにまわしていた。
そのおんなのこは、ユウイチのかおをみて、いじわるそうにわらっている。
「いーけないんだ、いけないんだ。あんなことしちゃうなんてさ。あたし、しーらないっと」
「いきなりなんだよ。それに、あんなことって?」
そこまでいって、ユウイチはきがついた。
このおんなのこは、くつをはいていない。
そればかりか、おんなのこの、はだしのままのしろいあしは、ちっともよごれていなかった。
くつをはかずに、はやしのおくまで、つちのうえをあるいてきたなら、あしはよごれているはずだ。
「あれをこわしちゃったでしょ。いまにたいへんなことがおきちゃって、こわいこわーいめにあうんだよ。もしかしたら、にどとかえってこられなくなるかもね」
それだけいうと、ちいさなおんなのこは、おおきなきのうしろにかくれてしまった。
おどかされてふあんになったユウイチは、おんなのこをよびとめようとして、すぐにおいかけた。
ところが、そこにはだれもいなかった。
あたりをさがしてみても、おんなのこのあしあとさえ、ひとつものこっていない。
まるで、さいしょからいなかったようだった。
せすじがさむくなったユウイチは、サッカーボールをひろうと、いそいではやしのなかからでていった。

そらをみあげると、たいようがしずみかけていて、あたりはくらくなりはじめていた。
このじかんなら、まだだれかとすれちがってもおかしくないのだが、ふしぎなくらいにひとけがない。
もしかしたら、このゆうぐれのせかいには、じぶんだけしかいないのではないか。
そんなかんがえがあたまをよぎり、ユウイチのあるきかたは、しぜんとはやあしになっていた。
サッカーボールをこわきにかかえ、さっきまでのことをおもいださないようにしながら、いえじをいそぐ。
しばらくあるいていると、まえのほうから、だれかがちかづいてくるのがめにはいった。
じぶんいがいのひとにであえたことで、ユウイチはあんしんし、それとなくひとかげのほうをみてみた。
ぎゃっこうになっているせいで、ユウイチからはみえにくかったが、どうやらおんなのこらしいことがわかった。
ながいスカートをはいた、かみのみじかいおんなのこが、くつのおとをひびかせながら、じょじょにユウイチのほうにあゆみよってくる。
「ユウイチさん」
ちょうどすれちがい、おたがいのかおがみえるくらいのきょりになったときに、おんなのこがユウイチをよびとめた。
おだやかなちょうしだが、あいてにうむをいわさないような、つよいひびきがかんじられるこえだった。
「え?」
このおんなのこは、なぜじぶんのなまえをしっているのだろう。
すくなくとも、おなじクラスにはいないこだし、がっこうのなかでもみたおぼえがない。
いくらかんがえても、ユウイチには、こころあたりはまるでなかった。
「あの、きみはだれ?」
おんなのこは、どことなくじょうひんなえみをうかべると、ふたたびくちをひらいた。
「わたくしは、よみともうします。ユウイチさん、あなたをむかえにまいりましたの。いっしょにきていただけますか?」
そういって、おんなのこがみぎてをさしだしてくる。
そのいろのしろいてをみたユウイチは、はやしのなかであったおんなのこをおもいだした。
めのまえにいるおんなのこも、さっきのちいさなおんなのこも、まるでちがかよっていないかのように、はだがまっしろだったのだ。
「むかえにって?なにいってんだか、よくわかんないよ。あそびあいてをさがしてるなら、あそんであげてもいいけどさ。でも、きょうはだめだよ。もうおそいから、またあしたね」
そういってかえろうとしたが、よみとなのったおんなのこは、ユウイチのてをにぎってきた。
そのてはつめたく、こえをあげるかわりに、ユウイチはサッカーボールをおとしてしまった。
「そういうわけにはまいりません。あなたは、わたくしのだいじなおきゃくさまですもの。ていちょうにおもてなししなければ、わたくしのきがおさまりませんのよ」
ユウイチは、なにかいおうとしたが、ことばがでてこない。
しかたなく、おんなのこのてをふりはらおうとしたが、それもできなかった。
ユウイチのからだから、みるみるうちに、ちからがぬけていく。
ユウイチはしらなかったが、このおんなのこはよみさんといって、じぶんがきにいったあいてをつれさってしまうというおばけだったのだ。
いしきがとおくなり、ひんのいいわらいをうかべるよみさんのかおが、じょじょにぼんやりとしはじめたとき、どこからか、かぜをきるおとがきこえた。

ユウイチのそばにたつよみさんにむかって、くろびかりするなにかが、いっちょくせんにとんでくる。
それは、ドクロのかたちをした、ぶきみなペンダントだった。
まゆをひそめたよみさんは、ユウイチのてをはなすと、かるくとびのいてペンダントをかわした。
「きぐうですわね、やみ子さん」
そういったよみさんのしせんのさきには、くろいふくをきた、ながいかみのおんなのこがたっていた。
やみ子さんとよばれたおんなのこは、じめんにあたってはねかえってきたペンダントをうけとめると、するどいめつきで、よみさんをみかえした。
「あいにく、そいつには、あたしがさきにめをつけていたんだ。おまえのでるまくはないよ。さっさときえな」
やみ子さんがすごんでも、よみさんは、まったくどうじなかった。
「まあ、そうでしたの。それがなにか?」
よみさんは、ふくについたほこりをかるくはらうと、こともなげにいった。
それをみたやみ子さんは、すこしきにさわったらしく、さっきよりもくちょうをつよめた。
「てをひけといってるんだ。いたいめにあいたくなかったら、さっさとかえりなよ」
よみさんのひょうじょうはかわらない。
さきほどまでとおなじように、おだやかにほほえんだままだ。
「やみ子さん。あなた、あのかたから、めをはなしていたんじゃありませんこと?まけおしみをいって、じぶんのしっぱいをごまかすなんて、すこしみっともないですわよ」
よみさんのことばを、やみ子さんは、だまってきいていた。
ふきぬけていったつよいかぜが、やみ子さんのながいかみのけを、おおきくなびかせる。

「そうかい。じゃあ、こうするまでだよ!」
ちょうはつするようないいかたをされて、やみ子さんのがまんは、げんかいにたっしたらしい。
ごうをにやしたやみ子さんは、おおきくうでをひくと、そのてのなかにあるペンダントを、よみさんめがけてなげつけた。
よみさんはすこしもあわてずに、はなかざりのついたあおいリボンをはなって、ペンダントをはじきとばしてしまった。
ぶつかりあったペンダントとリボンは、くうちゅうでまったあとで、おたがいのてもとにもどる。
「あいかわらず、わかりやすいですわね。やみ子さんらしいやりかたですわ。らんぼうなやみ子さんに、よくおにあいですことよ」
「うるさい!おまえはしゃべりすぎなんだよ!」
よみさんをにらむやみ子さんと、よゆうのあるわらいをうかべているよみさんが、ペンダントとリボンをかまえてむかいあう。

「いまのうちに、にげよう……!やばそうなかんじだったし、またつかまったら、なにをされるかわからないぞ……!」
サッカーボールをかかえたユウイチは、やみ子さんとよみさんがいいあっているすきに、いちもくさんにはしりだしていた。
いまになってかんがえてみれば、じんじゃのはやしにいたおんなのこがいっていた、たいへんなことというのは、このことだったのかもしれない。
さいしょにあらわれたおんなのこはもちろんだが、あとからでてきたおんなのこのほうも、なんだかこわいかんじがする。
ユウイチは、ふたりにみつからないことをいのりながら、せまいろじにはいっていった。
ところが、ろじをぬけたところで、なにかがものかげからとびだしてきて、ユウイチのゆくてをふさいでしまった。
つんのめったユウイチは、ころびそうになりながらも、なんとかたちどまった。

あらわれたのは、いっぴきのいぬだった。
ところが、そのいぬは、きげんがわるいらしい。
かおをあげたユウイチと、めがあったかとおもうと、ひくいうなりごえをあげたのだ。
きばをみせるようにしてくちをあけたいぬは、ユウイチのすがたをしょうめんにとらえると、ぜんしんをばねのようにしてとびかかってきた。
「うわっ!」
ユウイチは、とっさにあたまをさげた。
そのこうどうはせいこうし、とっしんしてきたいぬは、ユウイチをとびこえてちゃくちした。

ふりむいたユウイチは、そのいぬを、あらためてかんさつしてみた。
みためだけは、なんのへんてつもない、どこにでもいる、ごくふつうのいぬにみえる。
しかし、そうおもえたのは、いっしゅんだけだった。
いぬのひとみがぶきみにかがやき、そのかたちがねんどのようにゆがんだかとおもうと、きょだいなくちをもつ、おそろしいすがたのかいぶつにかわったのだ。
「う、うわあああっ!?」
おどろいたユウイチは、みつからないようにしていたこともわすれて、おおきなひめいをあげた。

どうようしたユウイチは、はんしゃてきに、てにもっていたサッカーボールをなげつけた。
しかし、それは、かんたんにはじかれてしまった。
あかぐろいひとみのかいぶつが、おおきなくちをあけて、ユウイチのほうにちかよってくる。

「どうやら、なにかあったようですわね。やみ子さん、つづきはおあずけですわ」
ユウイチのひめいをきいたよみさんは、いそいでろじうらにやってきたが、ひとあしおそかったようだ。

くちをおおきくひらいたかいぶつは、ユウイチにおそいかかると、あっというまにのみこんでしまった。

「たったいま、あなたがのみこんだかたは、わたくしのたいせつなおきゃくさまですの。かえしていただきますわ!」
すかさずよみさんがリボンをとばすが、かいぶつのうごきはとてもすばやく、あっさりとよけられてしまった。
「なんですって!?」
これはよそうがいだったのか、さすがのよみさんも、めずらしくおどろいたようなかおをしてみせた。
そこへ、よみさんをおってきたやみ子さんが、かけつけてきた。

「だから、あたしのじゃまをするなといったんだ!こいつは、あたしがやっつけてやるよ!」
かいぶつのうしろにまわったやみ子さんは、よみさんにつづいてペンダントをなげたが、これもかわされてしまう。
「ちっ、おもったよりすばしっこいね。なまいきだよ」
もどってきたペンダントをうけとめたやみ子さんは、くやしそうにしたうちした。

「さっきのこどもはね、こいつにつけられていたんだ。このかいぶつをやっつけるためには、こいつが、こどもをおそうしゅんかんをねらいたかったんだよ。おまえがじゃましたせいで、それがだいなしになった」
ユウイチが、じんじゃでであったおんなのこは、やみ子さんのいもうとのマホマホだった。
マホマホからはなしをきいたやみ子さんは、かいぶつがでてくることをよそうして、それをやっつけるためにユウイチをみはっていたのだった。
「いまは、そんなことをいっているばあいではないのではなくて?もんだいは、これからどうするかですわ。このまま、にらみあいでは、らちがあきませんもの」
「ふん、いわれなくてもわかってるよ!」
ふたりとも、かいぶつからは、めをはなしていない。
やみ子さんとよみさんは、ぜんごからかいぶつをはさんだじょうたいのままで、どうするべきかをかんがえていた。

さいわいなことに、なんとかするきっかけは、すぐにおとずれた。
とつじょとして、あたりにふしぎなふえのねがひびき、かいぶつのうごきがとまったのだ。
なにかにきづいたやみ子さんがまわりをみまわすと、くらがりのなかであかるくひかっているがいとうのそばに、ちいさなひとかげがある。
やみ子さんは、そのすがたをかくにんすると、しずかにほほえんだ。
そこには、ふえをふいているマホマホがいて、そのねいろが、かいぶつをにぶらせ、うごけなくしているのだ。

「こいつはマホマホのおてがらだね」
うすくほほえんだやみ子さんは、ペンダントをもつてをにぎりしめ、つよくちからをこめた。
また、やみ子さんのことばをきいて、よみさんにもわかったようだった。
うなずくと、リボンをかまえて、かいぶつのほうにむきなおる。
「さあ、これでもくらいな!」
「これは、さっきのおかえしですわ!」
やみ子さんとよみさんは、このきかいをのがさず、ペンダントとリボンを、どうじになげはなった。

ペンダントとリボンのふたつは、やのようにするどくとんで、こんどこそめいちゅうした。
かいぶつは、うめきごえとともにきえていき、そのあとには、きをうしなったユウイチがたおれているのがみえる。
それを、きょうみなさげにみたやみ子さんは、もどってきたペンダントを、もとどおりくびからさげなおした。

「ふん。こいつには、すこしだけてをやかされたよ。でも、これでおしまいだね」
そういったとき、やみ子さんは、よみさんのすがたがないことにきがついた。
それだけではない。
おなじようにユウイチもいなくなっている。
「わたくしは、これでしつれいさせていただきます。ユウイチさんは、わたくしのおきゃくさまですので、ていちょうにおつれしてさしあげますわ」
ひがおちて、すっかりくらくなったそらに、よみさんのおだやかなこえがきこえた。
よみさんのことばによると、ユウイチもいっしょにいるようだが、ふたりのすがたはまったくみえなかった。
「では、ごきげんよう」
そのことばをさいごに、よみさんのこえはきこえなくなり、しずかになったろじうらには、やみ子さんだけがたたずんでいた。

「まったく、わたくしとしたことが、まんまといっぱいくわされましたわ。こんごは、こういうまちがいは、ないようにしたいですわね」
よみさんは、カップについだこうちゃをひとくちのむと、ふかくためいきをついた。
そのとなりには、なぜかマホマホがいて、てにもったクッキーを、おいしそうにほおばっていた。
ユウイチをつれさったよみさんだったが、それはほんものではなく、マホマホがばけたにせものだったのだ。
「へへー。あー、おいしかった。ごちそうさまっ」
よみさんがふるまうおかしにありつきたかったマホマホは、ほんもののユウイチをろじうらにかくしておいて、そのかわりに、じぶんからつれてこられたのだった。
「はいはい、おそまつさまでした」
よみさんは、もういちどためいきをついて、すわっていたいすからたちあがった。

よみさんがマホマホをつれてたちさったあと、しばらくして、ユウイチは、じりきでおきあがった。
ついさっきまで、じぶんのみには、とてもしんじられないようなことがおきていたのだ。
それらは、すべてがゆめかまぼろしのようにもおもえたが、すぐそばにやみ子さんがたっていることから、ほんとうにおこったことなのだとりかいできた。
「きみは……」
やみ子さんも、ユウイチがのこっているのをみて、じょうきょうをさとったらしい。
へんそうしたマホマホが、よみさんについていったとすると、あとでむかえにいかなければならない。
「なんだ、ようやくきがついたのか」
やみ子さんは、ユウイチのかおをみると、そっけないくちょうでいった。
それでも、やみ子さんのおかげで、じぶんはたすかったのだということが、なんとなくわかったため、ユウイチは、おれいをいわなければならないとおもった。
「あの……。あ……ありがとう……」
しかし、ユウイチがかんしゃのことばをいっても、やみ子さんのぶあいそうなたいどは、やはりかわらなかった。
「ふん。おまえをたすけたわけじゃない。あたしは、あいつをやっつけたかっただけさ」
それだけいうと、やみ子さんは、ユウイチにせなかをむけた。
つめたいよかぜが、やみ子さんのやみのようにくろいかみをなでて、そのままとおりすぎていった。
「おまえたちみたいに、こまったことがあると、すぐたにんにたよろうとするやつらは、だいきらいだからな」
ユウイチのきもちをみすかしたようにいいのこすと、やみ子さんは、ろじうらからたちさっていった。
ユウイチは、なにもいいかえせなかった。
あとにのこされたユウイチは、ただだまって、やみ子さんのうしろすがたをみおくった。

「なあ。これ、おれにかしてくれよな。いいだろ?」
「え……。でも……」
よくあさになり、とうこうしてきたユウイチがきょうしつにはいると、からだのちいさいマサヒコが、ダイスケにつめよられていた。
ふたりからはなれたところでは、なんにんかのクラスメイトがかたまって、こえをひそめてはなしあっている。
「またやってる。ほんとうにさいなんだよな。あんなの、かわいそうだよ」
「でも、マサヒコもわるいよ。だいじなものをがっこうにもってくるなんて。ダイスケにみつかったら、とられちゃうにきまってるのにさ」
「クラスかえてほしいよな。こんなのふこうへいだよ。おれらだけ、いちねんかんも、ずっといやなおもいしなきゃいけないなんて。マジさいあく」
ランドセルをおろしたユウイチは、それをつくえにおくと、ダイスケとマサヒコのやりとりを、だまってみつめていた。
あたまのなかで、きのうのやみ子さんのことばが、おもいだされる。
なやんだすえに、ふたりのところまであるいていったユウイチは、いをけっしてこうどうをおこした。

「やめろよ。いやがってるだろ」
ふりかえったダイスケは、いがいそうなひょうじょうをしていたが、すぐにいつものちょうしでいった。
「なんだよ。べつに、なにもしてないじゃん。ただ、ちょっとかしてもらおうとしてるだけだろ」
ダイスケをまえにしたユウイチは、ついきおくれしそうになったが、まけずにいいかえした。
「だれがみても、いやがってるだろ。そんなこともわかんないのかよ」
ダイスケのひょうじょうがかわった。
ユウイチのたいどが、おもったよりもしつこいので、きにいらなかったらしい。
「ユウイチ。さっきから、いちいちうるさいんだよ。おまえ、なんかムカつくぞ」
ダイスケが、にぎりこぶしをつくってみせる。
おどかしのつもりだろうが、もしかしたら、ほんとうになぐられてしまうかもしれない。
それでも、ここまできたいじょう、ユウイチは、いっぽもゆずらないときめていた。
「それできがすむなら、やってみればいいさ。ぼくは、へいきだよ。そんなのぜんぜんこわくない」
そのことばをきいたダイスケが、ユウイチのむなぐらをつかんだ。
ダイスケのまゆは、いかにもふきげんそうに、おおきくつりあがっている。
ところが、そのひょうじょうが、しだいにかわっていった。
ユウイチからはみえていなかったが、じょうきょうをみまもっていたクラスメイトたちが、ユウイチのうしろにあつまってきていたのだ。
「な、なんだよ……。なにみてんだよ。あっちいけよ!」
ダイスケがどなっても、だれひとりとして、そのばから、うごこうとしなかった。
ユウイチのこうどうが、みんなのこころをあとおししたのだ。
「わ、わかったよ……。かえせばいいんだろ……。ご、ごめんな」
すっかりおとなしくなったダイスケは、ちいさなこえで、マサヒコにことばをかけた。

そのひから、はんせいしたらしいダイスケは、それまでのような、かってなふるまいはしなくなった。
やみ子さんは、ユウイチをたすけてくれたわけではないのかもしれない。
それでも、ユウイチは、やみ子さんにかんしゃしている。
ゆうきをふりしぼることができたのは、まぎれもなく、やみ子さんのおかげだからだ。


[完]





今回は、やみ子さんのダークヒーロー(ヒロイン?)っぷりを前面に出して、誰一人として主人公を救おうとしておらず、出てくる人物全員が自分の勝手で動いているにも関わらず、とにかく運が良かったので助かるという話にしてみました。
本人は人を助ける気なんてサラサラないのに、結果的に人助けという形になってしまうというのが、ダークヒーローの醍醐味の一つだと思ってます。
元々は、単にやみ子とよみさんのガチバトルにしようと考えてましたが、仲がよろしくない雰囲気にはなった気がするので、その点は満足でっす。





ここからは、ボツにした部分を、ちょっとしたおまけとして置いてます。
              ↓
みると、きをうしなっているユウイチのそばに、よみさんがしゃがみこんでいて、そのかおをのぞきこんでいるではないか。
まだあきらめていないのか、よみさんは、あくまでユウイチをつれていくつもりらしい。
「やみ子さんはもくてきをたっせいできたようですし、わたくしも、じぶんのもくてきをはたさせていただきますわ。そうでなければ、ほねをおったかいがありませんもの」
よみさんがてをのばすと、ユウイチはうっすらとめをあけて、からだをおこした。
「もうあんしんですわ。あのかいぶつはわたくしたちがたいじいたしました。さあ、あとはわたくしについていらっしゃるだけですわよ」
よみさんがかたりかけると、さっきまでとはうってかわって、ユウイチはうれしそうにわらった。
そのようすは、まるでべつじんのようだった。
「わかっていただけて、わたくしもうれしいですわ。では、まいりましょう」
ユウイチは、じぶんからよみさんのてをとると、いじわるそうにわらってみせた。
そのひょうじょうをみたよみさんは、なにかひっかかるものをかんじていた。
ユウイチのては、こんなにいろがしろかっただろうか。
「うん、いいよ。あたし、おちゃがしは、おいしいケーキがたべたいなー」
ユウイチのすがたがぼやけていく。
つぎのしゅんかん、そこにいるのはユウイチではなく、よみさんとてをつなぐマホマホだった。
よみさんのあいてをしていたユウイチは、ほんものではなく、マホマホがばけたにせものだったのだ。
「……だめですわ。あなたのためによういしたものではありませんもの。ごめんなさいね」
いっしゅんだけかたまったよみさんだったが、すぐにいつものちょうしをとりもどし、そうこたえた。
しかし、マホマホはなっとくしなかった。
「えー!なんでなんでー!?さっきは、ついてきてっていったじゃん。いこうよいこうよー!」
おねがいをことわられたマホマホは、てあしをばたばたさせて、だだをこねはじめた。

メモ

●面影町
地方都市・F市の片隅に位置する小さな町。
いわゆる門前町であり、室町時代に神社を中心として形成され、その信徒によって発達していった経緯を持つ。
町の中心にある小高い丘には、今も大きな神社が残っており、季節に合わせた催し物が定期的に行われている。
また秋になると、境内に根を下ろしている紅葉の並木が美しく色付き、紅葉狩りのスポットとしても親しまれている。
町全体としては、どちらかというと保守的な傾向にあったが、昭和の中頃から急速に近代化が進んでいった。
訪れる人々から見ると、古い町並みと新しい建物が同居している風景には、独特の風情が感じられるようだ。
現在の面影町は、“弓と矢”を使う謎の怪人によって、人知れず災いがもたらされている。
また、この町が発生した大本の起源は、“弓と矢”である。
●弓と矢
面影町の神社に祭られていた古めかしい“破魔矢”と“破魔弓”。
神社の関係者からは“御神体”と呼ばれており、これが神社からなくなってしまうと、大きな災いが起こると伝えられていた。
その実体は、射抜いた者からスタンド能力を引き出す“弓と矢”だった。
エジプトから海を経由して、室町時代の日本に持ち込まれた代物であり、その秘められた力を知った者たちの間で激しい奪い合いが起こった。
血で血を洗う争いに勝ち残った武士(中世のスタンド使い)は、希望と絶望を与える“弓と矢”の力に対して畏怖の念を抱き、そのために多くの人間が命を落としたことを憂えた。
いっそ“弓と矢”を破壊することも考えたが、それを実行する決意を固めるには、余りにも多くの血が流され過ぎていた。
ここで“弓と矢”を破壊してしまえば、“弓と矢”を手に入れるために命懸けで戦った者たちの死が、全く意味のないものになってしまう。
武士は悩んだ末に、世俗を捨てることを決意し、都から遠く離れた辺境の土地に移り住むことにした。
“弓と矢”を管理するための神社を建立し、そこで“弓と矢”を守りながら、静かに余生を送ることを決めたのだった。
しばらくして、疫病で苦しむ男を神主が救ったという話が、近隣の村々に出回り始めた。
“神通力(おそらく何らかのスタンド能力であろう)を使う神主”の噂を聞いた人々は、実際に会ったことで彼を深く尊敬するようになり、神主を慕う者たちが神社の周囲に集落を形成していった。
神主が往生し、新しい神主が彼の役目を引き継いだ頃には、集落は村になっており、さらに江戸・明治・大正という長い年月を経て、一つの町に発展した。
こうして誕生したのが、現在の面影町である。
つまり、面影町という町そのものが、“弓と矢”によって生み出されたものだと言い換えることができるのである。
この事実は、ごく少数の文献の中に、僅かながら書き残されている。
現在の“弓と矢”は、何らかのきっかけで秘められた力を知った何者かによって持ち出され、スタンド使いを生み出すために利用されている。

スタンドと本体のアイディア

名前:?
年齢:?
職業:?
性格:?

スタンド:『パラダイス・ロスト』
能力:近距離型の人型スタンド。指を鳴らすことによって、射程内にいる人間の“数秒間の記憶”を消し飛ばす。接近されたという事実を忘れてしまうために、この能力と対峙した相手から見ると、まるで瞬間移動しているように思えてしまう。

破壊力:A スピード:A 射程距離:E 持続力:D 精密動作性:A 成長性:C

名前:百道三四郎(ももちさんしろう)
年齢:10歳
職業:小学四年生
性格:身勝手で自己中心的。自分の能力に絶対的な自信を持ち、自分を止められる者は誰もいないと思い込んでいる。純粋無垢な子供を装って“ゲーム”を仕掛け、相手が自ら“ルール”を破るように仕向けるという手口で、次々に“魂”を奪っている。

スタンド:『ハロウィン』
能力:ジャックランタンに似た形の自動操縦型スタンド。本体が提示した“ルール”を相手が承諾し、その“ルール”が破られた時に発現し、相手の“魂”を奪う。この“ルール”は本体にも適用されるため、本体自身が“ルール”を破った場合、能力は強制的に解除される。

破壊力:E スピード:D 射程距離:C 持続力:C 精密動作性:C 成長性:D

スタンドと本体のアイディア

                             「三枝三姉妹」
                            三枝三姉妹とは!?
  地方都市・F市の片隅に位置する小さな町――面影町に住む、“スタンド使い”の三人姉妹のことであるッ!!
                       バァァァァァァァァァァァァァ――ンッ!!

長女:三枝菫(さえぐさすみれ)
年齢:25歳
職業:美容師
性格:非常に惚れっぽく、異常に嫉妬深い。普段は柔らかい物腰だが、実際は感情の起伏が激しく、ちょっとしたきっかけでブチ切れる。いつプッツンするのか分からないのが恐ろしい。

スタンド:『ヴィーナス』
能力:女性的な人型のヴィジョンを持つ自動操縦型スタンド。強烈な“嫉妬心”を原動力として動いており、本体が“嫉妬心”を抱いた時に限り発現し、“嫉妬”の対象を攻撃し続ける。“嫉妬”の対象に対して、本体が“優越感”を感じれば、スタンドは自動的に解除される。攻撃自体の狙いは甘く、攻撃する過程で対象以外のものを破壊してしまうことが多いため、スタンドが発現する度に周囲は迷惑を被ることになる。

破壊力:A スピード:C 射程距離:A 持続力:A 精密動作性:E 成長性:E

次女:三枝薫(さえぐさかおる)
年齢:20歳
職業:ネイルアーティスト
性格:基本的に淡々としており、よほどのことがない限り、何が起きても動じない。幼い時から姉と妹の板挟みになってきた経験から、物事を冷静かつ公平に判断する能力に長けており、常に中立の立場を心がけている。自分から問題の解決に当たることはないが、自分に降りかかる火の粉は迅速に払い落とす。

スタンド:『ナイン・インチ・ネイルズ』
能力:色とりどりの飾りがゴテゴテ付けられた“付け爪”のヴィジョンを持ち、本体の爪と一体化して発現する。この“付け爪”で引っかき、表面に“引っかき傷”を付けたものを、生物・無生物を問わず“猫”に変える。本体自身も、この能力を使うことで、“猫”に変身できる。ちなみに本体は“猫好き”であり、本体の傍らには、能力で変身させた何匹かの“猫”が常に存在するようだ。

破壊力:C スピード:C 射程距離:E 持続力:D 精密動作性:C 成長性:D

三女:三枝霞(さえぐさかすみ)
年齢:15歳
職業:私立・紅葉ヶ丘中学校の三年生
性格:彼女にとって最も大切なのは、あくまで今を楽しく生きることであり、一言で言えばチャラい。自身のスタンド能力によって男の姿と女の姿を使い分けており、それを利用することで、“彼氏”と“彼女”の二股をかけている(普通の人の二倍の楽しみを味わえると本人は言っている)。他者の心を掴む話術に長けており、どんな人間が相手であろうと巧みに言いくるめ、口車に乗せてしまう天性の才能がある。

スタンド:『スケルトン・セックス・スキャンダル』
能力:特定のヴィジョンを持たないスタンド。本体が触れた生物の“性別”を変える。本体自身は、いつでも好きな時に能力を使えるため、頻繁に“性別”を変更して遊んでいる。生まれつきの能力であり、出生時は無意識に能力を使用していたために男児か女児か分からず、えらく周囲を混乱させたらしい。

破壊力:なし スピード:なし 射程距離:なし 持続力:A 精密動作性:C 成長性:C
プロフィール

研究員D

Author:研究員D
「ギリギリ映らない画面端にいるエキストラ研究員」のイメージというのが名前の由来。
基本的に特撮ヲタ。
また、マイナーなものに惹かれる体質。
特撮全般および一部のアニメや漫画(マイナー作品とか古いの)を愛する。

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